文化放送「The News Masters TOKYO」のマスターズインタビュー。 熊本県の公式キャラクター「くまモン」の生みの親として知られるgood design company代表・水野学さんは、引く手あまたのデザイン事務所を率いるクリエイティブディレクターだ。 大企業相手に百戦錬磨のはずなのに、この日は少々緊張気味の様子、人間味がある人だな、と安心したところで、パーソナリティのタケ小山は早速「くまモン」の誕生秘話から話を始めた。
おせっかいから生まれた、熊本のシンボル「くまモン」
九州新幹線が開通し、熊本県では100年に一度のチャンス!と観光需要への期待に胸を膨らませていた。キャンペーンのため、クリエイターの小山薫堂氏と熊本県庁が「くまもとサプライズ」というキャンペーンを開始したことから、水野さんは旧知の小山氏からロゴマークデザインの注文を受けた。
ロゴを作って終わりのはずだったのだが...。「僕はおせっかい焼きで、ロゴマークだけで熊本が盛り上がるだろうか?と心配になりました。当時マンゴーなどの名産を持って、宮崎県をアピールしていた東国原元県知事を見て、熊本にもこういう人が必要だと思いましたが、人間だと面倒です。ならばキャラクターでも機能するのでは?と、締め切りギリギリで3分でひらめいたのが“くまモン”でした」
最初はロゴデザインのはずが、日本一有名な「ゆるキャラ」誕生となった。
「クリエイティブディレクターは、医者みたいなものです。患者さんは腰が痛いというけれど、原因が腰ではない可能性もある。プロの目で見ると別の方法でよくなる場合もあるんですよ」
デザインはコンサルティングに近い仕事。提供したデザインが顧客の「売り上げ」を作っていくツールにならなくては、プロとは言えない。
その商品が世に出た時の完成形を想像してみること、自分が欲しいと思えるかどうかで、よいデザインかどうかを見極める目が必要だという。
売れるかどうかは一目でわかる
水野さんは、タレントを見ただけで売れているかどうかがわかるという。ポイントは無意識にみんなが持っている共通の感覚がどのくらいイメージに盛り込まれているかだ。
「40代の人に数字の1をイメージする色を聞くと、ほとんどの人が『赤』を連想します。僕らが子どもの頃にテレビで見ていたヒーロー戦隊ものの『ゴレンジャー』の影響ですね。1番は赤、2番は青、3番は黄色だったからです。
デザインに『みんなが思っていること』をどのくらい盛り込めるか。売れるモノは大多数が『似合う』と思うカラーをまとっています。いかに似合う服を着せるのか、本人が気づいていない、その人らしさを発見して装わせるかが、プロの仕事だと思います」
これは会社のイメージ戦略でも威力を発揮する。企業の経営者は、たとえ明言化されていなくても、大義をもって仕事をしているものだ。
もともと持っていたが、表面化していなかった大義を堀出し、商品にアウトプットすることで、売り上げにつながったケースもある。
「例えば奈良の『中川政七商店』は、女性に人気の雑貨店を展開していますが、そもそも創業300年の麻織物の老舗です。伝統工芸を支えてきた長い歴史を受け継ぐ経営者は、日本の工芸を元気にしたいという使命をもっていました。そこで、中川政七商店では、元々もっている言葉でデザインに反映したものを提案し、よい結果が出ました」
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