今年最大のリスクイベントであった米中間選挙が行われ、結果が出ました。正直申しまして、予想の範囲内、リスクを大きく刺激することなく消化したとの印象です。 無難に通過したことで、特に経済・金融市場では次のテーマへと移行してゆくことになります。
下院の敗北と「大勝利」宣言
それでは金融市場の動きはどのようになったのでしょうか?株式市場の動きを見ましょう。
筆者が米国に滞在していた10月には、米ダウ平均株価が大きく下落、トランプ大統領が対中貿易摩擦で強硬な手段に出たことに対する懸念が噴出しました。対中輸入品の全てに追加関税を課すとも言い切っていました。米国物価の上昇、そして米企業の業績悪化を懸念する声が金融市場から出てきました。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は、過去1年間のダウ平均株価の推移を示しています。このことからダウ平均株価は24,000ドル近くまで下落しました。しかし、中間選挙まで一週間を切ると、大きく切り返し、そして中間選挙結果が出ると、26,000ドルまで回復してきました。(緑丸部分参照)これはどのように解釈したら良いのでしょうか?
トランプ大統領率いる共和党が、下院で過半数を失うことは想定内であり、それ以上のリスクは起こらないのではと市場は考えました。このことで、中間選挙1週間前から急速に楽観論が広まってきたのではという解釈です。
共和党が下院で過半数を取れなくなると、トランプ大統領は民主党に対して協調路線を取るのではないか、過去2年間での減税効果から経済が好調を維持していることから、よりきめ細やかな減税政策を打ち出してくるのではないかという予測が生まれました。現に、中間所得層の減税に着手するとの観測もあるようです。
悲観論としては、民主党が下院の政策運営を握ることから、トランプ大統領は、独自の権限である「大統領令」を駆使して、外交に臨むのではないかとの懸念があるようです。対中国との貿易摩擦交渉、対日貿易交渉などはこの範疇に入るようです。
これからの2年間は、トランプ大統領は大統領再選、そして「アメリカ第一主義」を前面に打ち出してくることが予想されています。民主党には若い人気を有した大統領候補者が不在のため、トランプ大統領には追い風のように思います。このことが「大勝利」との発言につながったのではないかと思います。
FRBの路線に変更はなし
金利の動き、そして為替の動きはどうでしょうか。
長期金利は10月中旬に下落に転じて、リスク回避の動きになったと言えます。しかし中間選挙に近づくにつれて、利回り上昇の動きに変化してきました。市場参加者がリスクを取る雰囲気に変化していったとも言えます。
下記グラフ(出所:ウォールストリートジャーナル紙)は米10年債の過去1年の利回りの推移を示しています。こちらも10月に一時的に利回り低下の動きになりましたが、再び本来の動きのリスク志向の利回り上昇、そして株式市場などリスク商品に資金が動くチャートになってきています。
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