筆者は先月、米国東海岸を旅する日々を過ごしました。その間、毎日米株式市場の指数を確認すると、大幅に下落する日々が続きました。昔から何が起こっているのかをチェックするのが日々の習慣となっていますが、その体質からは今回も脱出することが出来ませんでした。
これまでの経験として、筆者が外遊に出掛けると、海外市場は大荒れとなり、株式市場は大きく下落するというジンクスがあるのですが、今回もそのジンクスが活きている展開となりました。
現在のリスクの構造には、複数の材料が複雑に絡んでいると言えます。
まず、その土台には中国貿易摩擦が存在しています。この土台の上に、10月にはサウジアラビアによるサウジアラビア人ジャーナリスト殺害事件があります。この2つの問題はトランプ大統領が政治的、経済的に絡んできます。
そしてその脇を固めるイタリア財政問題、そして最近ではドイツの政局不安が絡んできています。
今回は、今のリスク構造がどのようになっているのか考察していきましょう。
米中国貿易摩擦問題
今まさに、米中が泥沼の貿易戦争に突入しています。
米国は9月に第3弾の対中関税を課しました。そして10月には、対中貿易交渉が進まない場合には、残り全ての輸入品も追加関税の対象にするとも言っており、強硬姿勢を崩していません。
強硬姿勢を続けるのには、来週に迫った中間選挙にも関連しています。
インターネットでトランプ大統領が所属する共和党候補の応援演説を聞いていると、このような発言はある意味、米国の支援者向けのようにも受け取れます。対中強硬姿勢をとらないと、中間選挙には勝利できないという理由も見え隠れするのです。
中国サイドの経済状況にも変化があるようです。
中国の今年上半期のGDP(国内総生産)成長率は前年比6.8%であったようですが、下半期はやや落ち込むのではないかとの観測が強まっています。中国政府としても、6.5%前後は確保したいところです。
下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は過去10年から直近第3四半期までのGDP(黒線)、製造業・建設部門(赤線)、サービス業(青線)の動きを示しています。
直近の2年間に限って見ると、3部門の数字は共に下降方向であり、どうしても悲観的になってしまいます。
今後は、最大の貿易相手国の米国に対する輸出額が減少に転じているかに注目してゆく必要があります。それは中国経済を直撃することになるからです。
中国は世界的にはグローバル経済を提唱しており、対欧州については、一帯一路の経済政策を打ち出しています。
そこに経済成長への活路を見出そうとしているのです。
米中貿易摩擦による米国への影響
一方、米国経済は今後、米中貿易摩擦の影響がどのような形で表れてくるのかについても注意して見ていく必要があります。
FRB(米連邦準備理事会)の声明文の中でも、米経済は順調に拡大成長を続けているとする一方で、対中貿易摩擦のリスクについても言及する文言が記述されています。
次のページ突然浮上したサウジアラビア問題
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26