高級スーツの老舗、銀座英國屋の三代目社長・小林英毅さん。 「全く継ぐ気はなかった」にもかかわらず25歳で英國屋に戻り、その3年後には社長就任。 「社長は組織の一番下」と語るほど社員を大事にする若きリーダーは、老舗企業の経営をどのような理念で取り組んでいるのか。 文化放送「The News Masters TOKYO」のパーソナリティ・タケ小山が「スーツ選びの基準」とともに話を聞いた。
対価が得られるのは、問題が解決した時だ
若くして経営者というポジションに就いたことで「仕事」についてより深く考えるようになったという小林さんには、仕事をしてお金を稼ぐということについての持論がある。
「対価が得られるのは、問題を解決した時だと考えています」
これはつまり、自分のスキルを提供したから、あるいは自分の時間を提供したからという理由でお金がもらえるわけではないということだ。
「たとえばがんの名医がいたとします。がん治療については非常に優秀なスキルを持っている。でも、そのスキルや能力はがんじゃない人には意味を持たない。同様に、フランス語が流暢に話せても、パソコンのスキルが高くても、そのこと自体にはあまり価値はないんです。大事なのは、それによって誰のどんな問題を解決できるのか、ということです」
逆に言うと、誰のどんな問題を解決する役割を果たしたいのか?と考えることから逆算してスキルを身につけていくという発想になる。さらに、こんなことも考えている。
「結果ではなく過程を大事にしたい」
これは、目標管理制度というやり方に違和感を持っているからだ。
「期初に目標を立てて、期末にその目標を達成したかどうかで成果を判断するという評価方法は、人の成長にはつながらない」と小林さんは言う。このやり方だと目標達成できるかどうかだけに気持ちが向いてしまうので、最初から達成できるような目標を設定しがちになる。できて当たり前だから、達成しても達成感がない。成長したという実感も持てない。
「それでは会社は良い方向には進みません」
今後、英國屋では各自が適切な形で目標を設定し、それに対してどう行動してきたかの過程を評価するという形に変えていく計画だ。
スーツを選ぶ際の基準は「誰の信頼を得たいのか?」
英國屋の商品はフルオーダーメイドのスーツだ。多くのビジネスパーソンにとって英國屋でスーツをつくるというのは憧れの一つでもある。
「小林さんにとってスーツって何ですか?」と、少々乱暴な質問を投げかけたタケに、小林さんは小気味いいほどの即答で返してくれた。
「仕事着です」
あまりにシンプルな答えに戸惑うタケに、小林さんはこう続けた。
「正直言って、そのことをきちんと理解していない人が非常に多いと思いますよ」
ビジネスパーソンが装う、つまり仕事着を選ぶ際に大切な基準というのは何だろうか?小林さんの答えは明解だ。
「その装いによって、誰の信頼を得たいのか?仕事着選びの基準はそれに尽きます」
組織の中で昇格していける人、または社会の中で起業などによって頭角を現す人たち。その誰もが「決して自分の力だけですべてを成し遂げてきたわけではないはずです」と小林さんは考えている。
「上の人や有力者など、引き上げてくれた人が必ずいたはずなんです。その方たちからの信頼というのが仕事ではとても重要です」
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