2018.10.24
「のれんは血よりも濃い」 船橋屋 代表取締役 八代目当主 渡辺雅司 〜老舗ファミリー企業が守る伝統と攻める経営〜
LEADERS online
南青山リーダーズ株式会社
江戸固有の和菓子「くず餅」の製造販売を手がける「船橋屋」は、江戸時代から続く創業211年の老舗企業だ。8代目当主、渡辺雅司氏にくず餅の持つ知られざる魅力と、医療や健康分野への展開計画などについて聞いた。
渡辺 ファミリービジネスで大事なことは「親父と息子の物語」です。
パラダイムみたいなものを次の世代に引き継いでいるところは、なかなかきついのではないでしょうか。
親父に楯突いてでも、自分のパラダイムを作っていくことが大事です。
渡辺家には「のれんは血より重い」という考えがあります。
船橋屋の当主に相応しくない人材は、たとえ自分の子どもであっても、のれんを継がせることはできない。
実際、8代続く中で、中にはダメ息子もいました。家業は継げず、外に出されました。
祖父も躊躇なく実子を追い出し、私の父を養子にしました。実は祖父も養子です。
僕にも息子がいますが、ダメだったら外に出します、家業を潰したら終わりですから。
(早川)銀行員から船橋屋の社員になって驚いたことや、社長を引き継いだときに苦労されたことはありますか?
渡辺 職人たちが、昔ながらの製法を護ってきてくれたことには、大いに感謝しています。
ただし、彼らの行動には驚くことも多くて。「今日の仕事はもう終わったから」と、午後4時ぐらいから「酒盛り」です。
何か指導をする時は、論理的に説明するのではなく、「バカヤロウ」と怒鳴り、時には手が先に出る。日曜日は場外馬券場に競馬に行ってしまい、お店には誰もいなくなる。そういうことが起きないように、トップダウンで押さえつけるしかありませんでしたが、どんどん人は辞めてしまった。
その度に新卒を入れて、自分の考えを理解してくれるような人材を増やしていきました。
(早川)リーダーシップの面で先代との違いを感じることはありますか?
渡辺 父親の時代は高度成長期です。
エスカレーター式に自分のポジションが上にあがっていく仕組みでした。
強いリーダーシップで、自分が引っ張るスタイルで良かった。
「仮面ライダー」のように、「改造されても一人で戦う」みたいな……。
しかし今は、どちらかというと人気コミックの「ワンピース」型と言うか、仲間をまとめ、同士を集めながら戦うというやり方が時代に合っているようです。
昔の組織はピラミッド型の編成でしたが、今は「オーケストラ型」だと思います。社長は指揮者で、バイオリンやビオラなどで音の悪い人がいたら、みんなで修正して、音を調整します。
「社長は同じ目線で一緒にいる」と感じてもらえたえら、それが安心感につながる。
仮面ライダー型をやり続けると、周りから人がいなくなります。ただ引っ張るのではなく、いかに仲間とともに心豊かに成長していけるかが重要と考えます。
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