文化放送「The News Masters TOKYO」マスターズインタビュー。 今回のお相手は、行動生態学・社会生物学研究者で九州大学の「持続可能な社会のための決断科学センター」准教授・村上貴弘さん。 ハキリアリというアマゾンのアリを研究する村上さん、アリ柄のTシャツにリュックというスタイルで登場。 博士というより、探検家のようだが、ジャングルでアリに噛まれつつ、巣穴を掘るフィールドワークの猛者だと思えばうなずける。 パーソナリティのタケ小山も同じアウトドア派、旧知のような打ち解けた雰囲気で話が始まった。
どうしてそんなにアリが好きなんですか?タケは率直に聞いてみた。
「人間以外の社会性をもつ生き物に興味がありました。鳥や小動物、魚の行動は、人と共通点が多く、なんとなく理解できてしまう。ところが、昆虫は特にアリは、想像を絶する暮らしをしています。その中でもハキリアリは、人間以外に唯一農業をする生物。これはバカにできないぞと、研究を始めました」
以来、20年以上、村上さんはアリの生態や社会の仕組み、進化の過程などを研究している。
今は日本の大学に所属しているが、今でも年に何回か中南米のジャングルでアリの巣を掘っているそうだ。
アリと言えば、フロリダのゴルファー時代、タケ小山はさんざんアリに噛まれた経験がある。
昨年そのアメリカで猛威をふるう害虫「ヒアリ」が日本にも上陸し、ひとしきり話題になった。村上さんは70回以上刺されているが、毒があるので刺されると腫れるものの、必ずしも全員が重症化するわけではないそうだ。
「昨年は日本に上陸したというので、ヒアリについて300件以上の取材依頼がありました。ヒアリはアマゾン原産で、1940年代にアメリカに上陸して大繁殖しています。外来生物は新入地で進化する傾向があり、ヒアリも、現地では弱いんですが、新天地で毒が強くなっています。駆除が難しく、アメリカでは経済被害が年間5000~6000億円、これまでに100人くらいの方が亡くなっています」
日本に上陸して、繁殖してしまうと、在来種が駆逐されてしまい、農業被害も懸念されて一大事。
自治体に駆除の指導をしたり、コンテナの業者にアドバイスしたりしているのだそうだ。ヒアリは怖い、それでもアマゾンでは弱いアリ?
では、強いアリっていうのは?
「熱帯雨林にいるグンタイアリは、毎朝10時半ごろがお食事タイムで、黒い動くじゅうたんのように広がって、そこにいる小動物を食べつくしてしまいます。もっと強いのがパラポネラというアリで、体長が3センチくらい、毒針に触れただけで3日くらい手が閉じられないほど腫れる猛毒を持っています」
中南米のアリの中で侵略的外来生物に変貌したのは比較的弱いアリたちで、強い種類のパラポネラやハキリアリが外来生物になって中国や日本にやってくる可能性は低い。
原産地では弱くても、ヒアリのように侵略的外来生物になってしまった昆虫には警戒が必要だ。外来生物の問題は、たびたびニュースになるが、爬虫類や魚類だけではなく、昆虫でも日本の固有種にとって深刻なのだ。
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