文化放送「The News Masters TOKYO」のマスターズインタビュー。 住友銀行副頭取、住銀リース社長などを歴任した吉田博一さんは、69歳で"地球の未来のために"蓄電池の会社、「エリーパワー」を起業した。 現在80歳の吉田さん。思うように仕事ができなかった銀行時代、そして現在社長として、仕事にどう向き合っているのか、パーソナリティーのタケ小山が聞いた。
前編:妻に内緒で69歳で起業。メガバンク元副頭取が考えた「高齢者の役目」
「失敗しない人なんて、いない」
「とにかく、失敗ばかりですよ」と明るく笑う吉田さん。
「技術者も失敗する、営業も失敗する。もちろん僕も失敗する」
だが、社員の失敗を怒ったことは一度もない。「こういう失敗をした」と報告を受けたときは、「そうか、じゃあ今度はこうやってみたらどうだ?」と返すようにしている。
「失敗の理由を見極めて、別の解決方法を見出せばいい。そうすれば、必ずいずれは成功できるはずです」
若い人たちに対しては「もっとリスクをとることを恐れないで進んで欲しい」と感じている。
「リスクをとると言っても、博打を打てということではないですよ。"失敗を恐れずに行動しろ"ということです」
失敗しない人なんて、いない。誰だってたくさんの失敗を積み重ねている。いくつになったら失敗しないというものでもない。
「だから、失敗を怖がることはないんです」
どうやら人間というものは、失敗を覚えて成功を忘れるという性質があるのではないか、と吉田さん。
「僕はね、失敗は忘れたらいいと思うんですよ」
もちろん、まるっきり忘れて同じことを繰り返すようでは成長は見込めない。
「本当に忘れるんじゃなくて、なぜ失敗したのかを考えたうえで、その経験を失敗と思わない形にして自分の中に収めていくことが大切です」
そうすることで、失敗は恥ずかしい過去ではなく大切な経験として蓄積されていく。
「努力する才能」
笑みを絶やさない温厚な表情の奥にある熱い情熱と果敢な行動力。
失敗をも前向きにとらえてくじけない精神力。どれほどまでにタフな人物なんだろうと思いきや、こんな言葉が飛び出した。
「いつも、辛いですよ」
驚くタケに、吉田さんは笑いながらも、さらにこう続けた。
「始めた時も辛かったし、今も辛い。そりゃ、なかなか大変です。人がやらないことを80歳を過ぎてやるのは、辛い」
銀行員としての輝かしいキャリアがあったゆえに、銀行のOBたちが退職後に選ぶ道とは全く違う道を選んだことで「失敗して銀行に恥をかかせる気か」といった声が耳に入ることもある。
それもまた、非常に辛いことだという。家族の反対も辛かった。
「もしも起業が失敗に終わったら、僕がこれまでに生きてきたことや成し遂げてきたことも全部消えてしまうのかな、という恐ろしさをいつも抱えている」
だが、「辛い」という言葉を繰り返しながらも、吉田さんの顔から笑顔が消えることはない。
人と違うこと、人の考えないことをやることは辛い。ただ、人がやらないことをやるからこそ勝てるとも思っているからだ。
そして、それを支えているのは「努力する才能」だと話す。
「銀行員時代、同期と評価で差がついてしまって、もう銀行を辞めてしまおうかと悩んだ時期がありました。ただ、親父が早くに亡くなって、苦労して僕を育ててくれたおふくろが銀行に就職したことをとても喜んでくれていたから、辞めたら悲しませてしまうかなと思って踏みとどまったんです」
そして、吉田さんが始めたのは「人の3倍がんばってみよう」ということだった。
普通の営業マンは一日に取引先や新規開拓先を20軒回っている。優秀な人は、30軒。
「だったらその3倍の90軒回ろうと決めて、実行しました」
当時、自分を励ますためにたくさんの本を読んだという。
その中の一冊、アメリカの実業家ブリストルの書いた「信念の魔術」という本がいつも吉田さんを支えてくれた。
「気がつけば、全国一位の営業マンになっていました。まさに信念の魔術。僕は天才ではないけれど、親から努力する才能を与えられたんだと思っています」
次のページ「念ずれば、花開く」80歳を超えて尚、未来を見つめる
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26