前編「ストロー廃止で何が変わる?マイクロプラスチックごみが警告する海洋問題」では、「マイクロプラスチック」と言われる微小のプラごみが海を汚染していることから、ストローを廃止する動きが世界的に広まっていることを取り上げました。 なぜストローばかりが注目されるのかというと、ストローが持つ形状からリサイクルされにくいことや、一部の人を除いてはストローを使用しなくても支障がないからです。 そのため、他のプラスチック製品よりもストローの廃止は着手しやすいようですが、ストローがなくなることで諸問題が露呈し、代替案が検討されるなど、さまざまな動きが出てきました。また、マイクロプラスチックごみが魚だけではなく、サンゴの成長にも悪影響を与えていることもわかってきました。 前編に引き続き、マイクロプラスチックごみにかかわる動きについてお伝えします。
このような技術開発は、海洋汚染という社会的な課題に貢献するうえ、さまざまな挑戦をし続けることになります。研究者や企業にとって世界的な使命があり、やりがいがあるだけでなく、さらに全人類から切望される技術となっていくことでしょう。
サンゴの成長をも阻害している
マイクロプラスチックごみは、魚だけでなくサンゴにも大きな影響をおよぼしていることが明らかになっています。
米国や豪州などの国際研究チームが、2011~2014年にかけて12万4000の造礁サンゴ(サンゴ礁をつくるサンゴ)を調べた結果を発表しました。サンゴ組織が白く壊死する「ホワイトシンドローム」などの病気になるリスクは、プラごみがない場合で4%でしたが、プラごみがサンゴに接している場合は89%でした。サンゴが病気になるリスクは、実に約20倍の高さだったのです。サンゴとプラごみが接することで光と酸素が不足してサンゴにストレスがかかり、病原菌に侵されやすいと考えられるのだそう。
この研究チームでは、アジア太平洋地域でサンゴに影響をおよぼすプラごみは111億個であり、2025年には157億個と、約40%増えると予測しています。
また、東京経済大などの研究チームでは、プラごみがサンゴの成長に欠かせない藻類を取り込みづらくなり、サンゴの成長を阻害しているという研究結果をまとめました。
サンゴは体内に「褐虫藻(かっちゅうそう)」という微小な藻類を取り込み、褐虫藻が光合成して作り出した栄養をもらって成長しています。一方、褐虫藻はサンゴを住処にしながらサンゴの老廃物をエサにしているという、言わば、共生共存の間柄。研究では、幼いサンゴにプラごみを混ぜたエサと褐虫藻を与えたところ、取り込んだ褐虫藻は半数にとどまりました。プラごみの混ざっていないエサを与えたグループは、与えられたすべての褐虫藻を取り込んだということです。
魚や貝などの生息地として多くの生物の多様性をもたらすうえ、高波を防ぐ機能を持つサンゴ礁。マイクロプラスチックごみはサンゴの成長を阻害するだけでなく、海洋生物全体へも悪影響をおよぼす恐れがあると研究者は警鐘を鳴らしています。
── マイクロプラスチックごみがもたらす海洋汚染を食い止めるために、ストロー廃止を打ち出す企業や飲食店に対して、「単なるポーズだ」という声が一部にあるようです。確かに、プラスチック全体がおよぼす影響を考えると、ストロー廃止はその第一歩、ほんの少しの前進でしかないかもしれません。たとえそれが小さな歩みだとしても、対策を講じ、改善する努力をしなければ何も変わらないことをぜひ考えてほしいと思います。
美しい海を、私たちの地球を守るための課題は山積みの状態です。次回もマイクロプラスチックごみの問題について紹介します。
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