2018年夏の記録的猛暑を受け、2020年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技に支障が出るのではないか、と懸念が広がっている。 これに対して、マラソンや競歩などを朝7時にスタートさせるなどの対策で乗りきろうとしているが、その実効性には疑問が残る。 そこで、にわかに注目され始めたのがサマータイムの導入だ。日の出の時刻に合わせて、一日の時間を前倒しにする手法は多くの国で採用されているが、日本ではなじみがない。サマータイムを導入すると何が変わり、どのようなメリット・デメリットが生まれるのか考えてみたい。
しかし当時、圧倒的に多かった農家の生活のリズムが崩れたり、企業の残業時間が増えるなどのデメリットが顕在化したため、サンフランシスコ条約締結後、日本が政治的に独立した1952年から廃止に。さらには、民間企業と公務員の出社時間が重なり、通勤時間帯のラッシュが激化したことも理由のひとつにあったようだ。
つまり、日本がかつて採用していたサマータイムは、日本社会を円滑にするためのものではなく、戦後の混乱期に、GHQが本国同様のDSTを無理やり日本に当てはめたものだったと言える。
サマータイム導入のメリットと経済効果
サマータイムを導入すると、日本社会にはどのようなメリットと経済効果があるだろうか。
① 節電になる
明るい時間に帰社できるため、人のいないオフィスのエアコンや照明を切ることができる。家庭でも、就寝時間が早まることで消費電力削減につながる。
② 余暇の有効活用ができる
明るい時間に仕事を終えて退社できることから、平日であってもショッピングや外食、趣味などに時間を充てることができる。
③ 消費動向が高まり、景気がよくなる
平日にショッピングや外食ができるようになると、消費活動が活発になり景気拡大への期待も高まる。
サマータイム導入の経済効果は7000億円超?
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは、サマータイム導入で個人消費が押し上げられ、年間7000億円以上の経済効果があると試算している。
永濱エコノミストは、日常の生活時間が3カ月間2時間前倒しにされることで、余暇時間内の日照時間が2時間増加することに着目。そこから、今回のサマータイムの影響で年間の名目家計消費が「+0.3%ほど」増加すると試算している。2017年度の名目家計消費が 246 兆円程度であることから、約0.3%の増加は約 7532 億円に相当するとしている。
加えて、システム変更などの導入コストがかかることなどで企業の設備投資が押し上げられる可能性もあり、想定以上の特需が発生する可能性もあるとしている。
サマータイム導入のデメリット
これに対して、サマータイム導入には多くのデメリットも指摘されている。
① 労働時間が逆に長くなってしまう
始業時間が前倒しになるだけで、就業時間は変わらない、あるいは残業が増えるなどの問題が出てくる可能性が高い。特に中小企業で労働時間の延長につながりかねない。
② 消費電力の削減にならない
始業時刻を早めた分、終業時刻も早くならなければ、企業の消費電力削減はかなわない。残業という形で労働時間が長くなれば、節電にはつながらない。
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