米国不動産投資考察の第二弾レポートです。前回は海外の不動産投資で注意すべき要点を解説しました。 ①ドル金利、②為替レート、③米国全体の不動産価格傾向、でした。今回は、米国の地域性について考察します。
各地域の不動産価格
不動産価格の地域性を見ましょう。下記のグラフ(出所:住友不動産資料)は、米国の各地域の不動産価格の推移を示していて、1980年を100を基準とした価格を示しています。
前段で説明しましたが、ニューヨークは不動産のストックが充実し、マンハッタンに経済と娯楽の機能が凝縮されています。そして国連本部がありますので、政治的にも重要な位置づけであるため、不動産価格は全米一です。
オフィスビル需要、そしてホテル需要、海外ビジネスマン向けのマンション需要は特に旺盛で、不動産価格上昇期待から、必然的に海外投資家の投資マネーが流れ込んで来ます。ワシントンの不動産価格も、ニューヨークには及ばないものの、かなり高い水準であるのではと推測します。
それに次ぐのが、カリフォルニアとハワイの不動産価格であるとグラフは示しています。カリフォルニアはサンフランシスコとその近郊のIT産業の拠点需要が不動産価格を押し上げているのではと推測します。そして娯楽産業の都市ロサンゼルスを抱えています。
そして驚くのはハワイの不動産価格の高さです。米国の標準価格を大きく上回り、カリフォルニアの不動産価格とほぼ同水準と言えます。常夏の楽園というイメージが米国人のみならず日本などアジアからの観光客を集めていて、不動産価格が上昇しているようです。
著者評
その他地域の筆者の印象を述べます。シアトルを中心としたワシントン州は近年米国の有力な企業が本社を設ける傾向が見られます。ボーイング、アマゾン、マイクロソフト、スターバックコーヒーなど皆さんが知っている企業です。
気候が温暖で、自然豊かな土地柄で、有名企業が進出する結果となっているようです。森と湖が近郊に多く配し、住宅環境が非常に良く、オフィス、住宅の価格は上昇傾向にあるようです。
またリゾート系の都市、地域にも注目です。エンターテインメントの中心地ラスベガス、年金受給者など高齢者の受け入れ先であるリゾート地のフロリダ、アリゾナは今後も不動産の需要が高いように思います。
このグラフでは、米国の不動産価格が2000年以降大きく上昇カーブを描いていることも特徴的です。2007~2008年に起きたサブプライムローンの破綻をきっかけとしたリーマンショックまでは、不動産に投資すれば儲かるという神話が生きていたのでしょう。
2000年から2006年にかけてのニューヨークの価格は実に2倍(300から600に上昇)の動きになっています。そしてリーマンショック後の落ち込みで、カリフォルニアの落ち込みが最も急であったと分かります。
しかしニューヨークの価格は、実需面が旺盛であり、それほど落ち込むことはなかったのではと考えられます。現在は2010年以降の米経済の回復が、FRB(米連邦準備理事会)による低金利政策と大規模資金供給策によって支えられ、急速に不動産価格回復への道を辿っています。
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