内定取消しには正当な理由のあるものと、不当な理由で取り消されるケースの両方が考えられますが、もし不当に内定を取り消された場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?今回は、内定の取消しにあう主な理由、取り消された場合の裁判例と対処法をご紹介します。
したがって、採用担当者から内々定を得たものの、正式内定は未了という段階では労働契約が成立しているとは考えにくいでしょう。
そうなると、「内々定」の取消し通知は、労働契約そのものの解除ではないことになりますので、解雇ではないことなり、この効力を争って雇用上の地位を主張するということは難しいかもしれません。
もっとも、内々定を得た労働者が一切保護されないということはなく、雇用契約締結への合理的期待が不当に侵害されたと認められる場合は、別途慰謝料請求等が可能です。
まとめると、
- 「内定」:雇用契約とみなされる
- 「内々定」:雇用契約と認めさせるのは難しいが損害賠償請求ができる可能性は残っている。
内定取消しが争われた裁判例
実際に内定取消しが裁判で争われたケースをご紹介します。
インフォミックス事件;中途採用の内定取消し
他会社からスカウトを受け内定を受けたのちに、スカウトを行った会社の業績悪化を理由に内定取り消しを受けた事件です。判決として、内定取り消しの無効と、1年分の賃金仮払いの仮処分を受けました。
大日本印刷事件:新卒採用の内定取消し
新卒労働者は在籍大学の推薦を受けて求人募集に応じ、筆記試験と適性検査を受け採用内定の通知を受けるが、新卒労働者の在籍大学が求人募集に対する学生の推薦に関し、「二社制限、先決優先主義」を徹底していた為、新卒労働者は内定通知を受けた後、大学の推薦で応募していた他社への応募を辞退した。
しかし、入社予定日の約2ヵ月前に突然、採用内定取消しの通知があり、理由も示されていなかった。取消し通知のあった時期が遅かったため他の企業への就職が事実上不可能となり、就職することもなく大学を卒業するに至る。
そこで、採用内定取消しは合理的理由を欠き無効である等主張して、従業員としての地位確認等の訴えを提起。
判決:労働者側勝訴
企業側の採用内定取消しは無効とされた。
採用内定により、労働者が働くのは大学卒業直後とし、それまでの間に企業と学生が取り交わした誓約書に記載されている採用内定取消し事由があれば会社が解約することができることを約した労働契約が成立したと認められた事例です。
World LSK事件|損害賠償請求事件
被告から、当時の勤務先の退職日翌日から就業を開始する旨の採用内定が出されたことから、原被告間では、同日を就業開始日とする解約留保権付労働契約が成立したと主張する原告が、被告は合理的かつ相当な理由を示すことなく一方的に採用内定を取り消したなどとして、損害賠償を求めた事案。
次のページその他:損害賠償請求が伴った裁判
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2015.07.17
2009.02.10
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