ハンバーガー業界に次々と新興勢力が登場している。また、迎え撃つ既存勢力もふと気がつくと強大なリーダー企業・マクドナルドの迷走によって相対的にポジションが変化して優位なポジションを占めている。そうなってくると、一層厳しくなるのがマクドナルドの復活だ。
■対処療法的なマクドナルドの施策?
マクドナルドの業績は8月の既存店売上高が19ヶ月ぶりにプラスに転じ復活の光明が見えたかと思ったが、9~10月は再びマイナスに転落した。10月下旬には200円という価格帯で提供する「エグチ」「バベポ」「ハムタス」というニックネームの新作3品を投入。平日昼間の割引「昼マック」を廃止する代わりに500円のセット商品を週末も売る施策を開始した。前者の施策で100円マックという最低価格を向上させつつ、メニューの高さから敬遠する客を呼び戻し、後者の施策で同じく割安感を出しつつ、週末のファミリー客を呼び戻す意図が感じられる。現在の同社の問題1つはメニュー価格の二極化と、低価格メニュー狙いの客層の増加・ちょっと週末ランチするには高くなりすぎた価格を敬遠して主顧客であるファミリー離れが顕著な点が挙げられるが、その解消に躍起になっているように見える。
■新興勢力の攻勢
マクドナルドがそうこうしているうちに、新興勢力の人気が高まっている。「シェイクシャック」は厳選素材にこだわり、680円~980円の価格で商品を提供。顧客からの味の評価は非常に高く、東京・神宮外苑の1号店には連日行列が絶えない。
同じく食材の質・オーガニックに徹底してこだわる「ベアバーガー」も東京・自由が丘に1号店を構えた。価格は1380円~2980円という高価格にも関わらず顧客の満足度は高くリピート率も高いという。
国内の新興勢力もある。東京・表参道に12年12月に店を構えた「ザ・サードバーガー」は店内でバンズを焼き、肉を挽くなど製法にもこだわるが、自店の名を冠した中心商品「ザ・サードバーガー」は594円と、メニュー価格はマクドナルドと1000円超えのグルメバーガーの中間に位置付けるなど価格戦略にも抜かりはない。
■変化した既存勢力のポジション
モスバーガー、フレッシュネスバーガーなどの既存勢力は、以前ならマクドナルドと比較され、「高価格チェーン」と認識される傾向が強かったように思われる。しかし、現在のモスバーガーのメニューは220円~550円で、400円未満の商品が半分を占めるという。フレッシュネスバーガーも350円~760円という価格の中、マクドナルドの価格対と重なる400円未満の商品が半分以上を占めるという。
各社の価格設定の意図は様々な要素が絡み合っているはずだが、業界リーダーのマクドナルドの価格戦略に影響を受けていることは間違いない。マクドナルドの価格戦略といえば、日本マクドナルド創業社長の藤田田氏が1900年代後半のデフレ時代に一気に低価格化して業績を大きく伸ばし、一時は「デフレ時代の勝ち組」とも呼ばれた。しかし、2000年に入り円安と行きすぎた客単価の低下で業績が大きく低下。その後、米本国からのテコ入れもあり、2005年の原田泳幸氏社長就任以来、客数維持のため100円メニューを拡充する一方、レギュラー商品の価格は一貫して値上げの方向性を取り続けた。その結果、モスバーガーやフレッシュネスバーガーとの価格差が縮小。今まで「高いから」と両チェーンを敬遠していたマクドナルド派の消費者もそこに気付き、顧客が流出することとなった。
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外食産業
2015.07.29
2015.09.03
2015.11.17
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。