手をかざすだけでオフィスや家のドアを開錠したり、ショッピングの代金や電車賃を支払ったり、パソコンや登録サイトにログインしたり……。そんなSF映画のような日常シーンが、いよいよ現実のものとなりつつある。
これは、手の皮膚の下に認証チップを埋め込む「マイクロチップ・インプラント」と呼ばれる個人認証システムで、手をかざすと非接触型ICカードのように、近距離無線通信で個体識別情報を読み取る仕組みとなっている。つまり、いつも持ち歩いていたカギや財布、電子マネーやクレジットカード、面倒な暗証番号やIDの入力なども、これで不要になるというわけだ。すでに、体内にマイクロチップを埋め込んだ人は世界に数十万人いるといわれ、2017年からはアメリカの企業やスウェーデンの国営鉄道でも、従業員や乗客のサービスとして導入されているという。まさに「歩くIC」「人体Suica」ともいうべきマイクロチップ・インプラントの最前線に迫った。
社内での業務や買い物が、よりスムーズ&便利に!
米ウィスコンシン州の自動販売機メーカー「スリー・スクウェア・マーケット」では、従業員の手にマイクロチップを埋め込み、社内での業務や買い物などに利用できるサービスを2017年8月から導入。マイクロチップを埋め込んだ手をリーダーにかざすだけで、社内のドアロックの開錠、コンピューターへのログイン、コピーマシンの利用、休憩室に設置されたマイクロマーケットでの支払いなどが可能になる。
このマイクロチップは2004年にアメリカ食品医薬品局(FDA)が認可したもので、チップ内のデータは暗号化され、他者に追跡されるGPS機能は搭載されていない。同社は従業員へのマイクロチップ埋め込みについて、その目的を「従業員への利便性の提供」と限定し、一人ひとりのプライバシーや情報セキュリティ、健康への影響などに十分配慮していると説明。チップを埋め込むか否かは任意だが、同社の従業員であれば無料でインプラントが受けられるため、すでに50名以上がマイクロチップを埋め込み、社内生活で利用しているという。
キャッシュレス社会が加速するスウェーデンでの試み
同じくスウェーデンの国営鉄道「SJ」でも、マイクロチップ・インプラントを利用したサービスを2017年6月から試験的に導入している。車内検札時に乗客の手に埋め込まれた認証チップをスキャンすることで、乗車料金を徴収するというものだ。
サービス導入のきっかけは、マイクロチップを埋め込んだ乗客の「これ(手のチップ)で運賃を支払えないか」という要望。体内にマイクロチップを埋め込んだ「バイオハッカー」と呼ばれる人たちは、スウェーデン国内に2000人以上いると見られており、ストックホルムの公共交通機関「SL」やスカンジナビア航空でも、今後のニーズを見込んで同様のサービスを検討しているという。
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