開発購買という言葉は2002年位から使われ始めました。しかしこの15年間で様々な企業が取組みをしていますがあまり上手くいっているという声を聞いたことがありません。 何故でしょうか?また上手くいくためにはどうしたらよいでしょうか?3回シリーズで取上げていきます。
一つ目は意識のギャップです。
先ほど開発部門の機能はよりよい製品を市場に投入することと述べましたが、開発部門にとって「よい製品」の定義で一番考えやすいのは技術的に差別化された製品でしょう。一方で原価部門や製造部門、購買部門にとっての「よい製品」の定義は少しづつ異なります。特に購買部門にとっては自社収益につながる製品であり、その構成比である購入品にも低コストを求めるでしょう。
これは本質的な意識のギャップです。
また原価・購買部門は開発上流段階で仕様や設計が固まる前でなければ大幅なコスト削減はできないことを実感しています。一方で開発部門にとっては開発上流段階での購買(的)活動でどのようなメリットがあるのか実感できないというのが本音でしょう。このような点でもギャップが生じています。
二つ目は仕組みのギャップです。
この15年で開発購買の取組みについては様々な仕組みが試行錯誤されてきました。部品データベースの活用、わいがや方式、クロスファンクションチーム、開発購買チームなどです。しかしどれも決定的な仕組みにはなっていません。仕組みのギャップの本質的な問題はコミュニケーションと情報共有の欠如です。開発購買の取組み自体は開発段階で購買的視点を持ち購買を行うことです。
つまりどういうサプライヤがどんな技術を持ち、またどんなパーツを使って開発をすればQCDの作り込みができるのか、このような情報を購買や原価部門が提供し、それを開発部門が活用することが必要です。このコミュニケーションや情報共有が欠如しているということは提供する(できる)情報と欲しい情報にギャップが生じていることに他ありません。また情報の鮮度管理の問題もあります。常に最新の鮮度の高い情報をメンテナンスして情報の共有をすることは、たいへん難しいことです。
開発購買を推進する課題として多くの企業で取り組まれているのは、開発購買チームを設置する方式です。
多くの企業で開発購買チームは開発出身者が購買部門内に集められチームを結成します。このチームは開発部門と密にコミュニケーションをとり情報を提供し、開発上流段階での購買活動を支援するというのが狙いです。
しかしこの開発購買チーム方式も必ずしもうまく機能していません。同様にこの15年間に様々な仕組みが試行錯誤されてきました。しかしいずれの仕組みも先ほどの意識のギャップを解消できていないのです。つまり主語がない活動だからなのです。主語が開発部門でない仕組みには限界があります。開発・設計をしているのは開発部門だからです。
これが開発購買が上手くいかない理由の一つであることは間違いないでしょう。
しかし一方で開発購買を上手く機能させている企業もあります。次回はその企業の事例について述べていきます。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。