2017.09.05
「品質第一主義で守る日本の海苔文化」7代目が受け継ぐ先代のメンタリティー 山本海苔店専務取締役 山本貴大
LEADERS online
南青山リーダーズ株式会社
ご飯や弁当のおにぎり、蕎麦、寿司、ラーメンに至るまで、日本人の食生活と、「切っても切り離せない関係」にある海苔。お中元お歳暮など贈り物の主役としても親しまれ、最近では海外でも人気を博している。そんな海苔を扱う店として江戸末期に創業、168年の歴史の中で常に業界をリードしてきたのが日本橋の「山本海苔店」だ。代々受け継いできた同社の強みや、事業を続けていくうえで大切にしていることなどについて、老舗の7代目として生まれ、現在は営業本部長を務める同社専務取締役の山本貴大さんに話を聞いた。 (聞き手:早川周作・経営コンサルタント/構成:株式会社フロア)
ご飯や弁当のおにぎり、蕎麦、寿司、ラーメンに至るまで、日本人の食生活と、「切っても切り離せない関係」にある海苔。お中元お歳暮など贈り物の主役としても親しまれ、最近では海外でも人気を博している。そんな海苔を扱う店として江戸末期に創業、168年の歴史の中で常に業界をリードしてきたのが日本橋の「山本海苔店」だ。代々受け継いできた同社の強みや、事業を続けていくうえで大切にしていることなどについて、老舗の7代目として生まれ、現在は営業本部長を務める同社専務取締役の山本貴大さんに話を聞いた。
(聞き手:早川周作・経営コンサルタント/構成:株式会社フロア)
品質のよい商品を、お客様の懐にあった値段で
(早川)老舗6代目を父親に持つ山本さんは、いずれ家業を継ぐことが、運命づけられている立場だと思います。大学卒業してから現在に至るまでの経緯について教えてください。
山本 慶應大学を卒業して4年弱、大手都市銀行に勤務しました。山本海苔店に入社したのは2008年10月です。3カ月後には上海に赴任しておむすび店を開業、2年後には、シンガポールでの新規店舗立ち上げを経験しました。その後、営業部長に就任し、現在は専務取締役です。
入社して驚いたことがいろいろありました。銀行にいた頃は、「利益が出るのは良いことだ」という感覚でしたので、入社1年目に「今年の海苔は、仕入れ単価が去年よりも安くなりましたね。良かったですね」というと、確かに経理部長は「そうですね」と答えてくれたのですが、仕入部長は「海苔業界のリーディングカンパニーの山本海苔が、こんな安く買ってはいけません。業界に未来がなくなります」とたしなめられたのです。それが最も衝撃を受けた瞬間でした。
もう一つ驚いたのが、当社には、どこの会社でもあるような「経営理念」がなかったことでした。それどころか、中期計画もあるようなないような状態でした。そこで、社員全員でディスカッションして、半ば強引に作ったのが、現在の「おいしい海苔を、より多くのお客様に」というものです。その思いは今も変わりませんが、いずれはコンサルタントを入れ、社員アンケート調査なども行い、さらに良いものを作りたいとも考えています。
(早川)明確な経営理念がなかったにもかかわらず、なぜこれだけの長寿企業になったのでしょうか?
山本 まず、海苔という商品についての説明から始めさせてください。そもそも海苔とは、製販分離という業態が徹底された商品なのです。海苔を作る人が売ってはいけないし、販売する人も作ってはいけない。生産者の仕事は、海苔を取り、ミンチして、それを漉いて紙みたいにするところまで。私たちはその状態で買った海苔を焼いて、味をつけて決められたサイズに裁断するというのが業界のルールなのです。
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