2020年に向けてサステナビリティという概念がたいへん重要になってきています。 サステナビリティとは持続可能という意味ですが従来のCSR(企業の社会的責任)とどこが違うのでしょうか?またそれをサプライチェーン全体で捉えた場合に何を考慮しなければならないのでしょうか?
先日テレビで東京オリンピックに向けてのサステナビリティとフェアトレード商品について取り上げていました。やはり調達分野でもこの先の大きなトレンドの一つとしてサステナビリティが上げられるでしょう。
サステナビリティとは「持続可能」という意味です。一般的には従来のCSR(企業の社会的責任)を包含した活動ととらえられます。
サステナビリティには3つの側面があるといわれ、それは環境、社会、経営(経済)です。そういう意味からはCSRに対して環境、経営の2つの側面が追加された概念と言えるでしょう。(厳密にいうと環境は既にCSRにも含まれていたので「経営」面が範囲として拡大追加されたと考えられます)
サスティナビリティは「責任あるサプライチェーン管理」を最終製品等を製造する企業(先進国側)が川上にある途上国側も含めて行うことを求めています。例えば資材や原材料の調達が途上国側の自然破壊や環境汚染につながっていないことや、人権を無視するような労働条件や労働環境によって実現された低コストでないということ等を先進国企業側が保証するということです。つまりサプライチェーンに何らかの無理や無駄があると、それは持続可能ではない、つまりサスティナブルではないということなの
です。
よく『安定調達』という言葉が使われますが、この安定という言葉の中には多くの意味が含まれます。品質の安定、量的な安定もです。またコストの安定も上げられます。安定調達はどこかに無理や無駄があると実現できません。ですからサステナビリティという言葉は『安定調達』の実現と言い換えることもできます。
このように捉えるとサステナビリティとCSRの違いが浮かび上がってくるのではないでしょうか。CSRはどちらかというといくつかのガイドラインやコードが決まっていて、それが守られているかどうかという観点が中心でした。それに対してサステナビリティはより広い観点で「安定しているか」「持続可能かどうか」という視点が求められています。
最近は働き方改革が叫ばれていますが、これは電通における過労による自殺事件が発端になりました。この事件では電通における過酷な働き方が社会的にも問題になっているわけですが、もう少し考えると、この自殺した女性は電通でどこかのクライアントの仕事に従事していた訳です。どのような仕事をしていたのか詳細は分かりませんが、このような状況を結果的に作ったクライアント側にも問題があったと言いざるを得ません。過労で自殺するような状況になるような仕事のさせ方をしていた訳で、これはどう考えても「持続可能」ではないからです。サプライヤに持続可能でない無理な仕事のやり方をさせても、これはサステナブルではありません。このようにサステナビリティを捉えると範囲は広がります。例えば無理なコストの押し付け、曖昧な仕様要件で発注し発注後に仕様変更が多発、これって「持続可能」な「安定調達」でしょうか。
いまだにコンサルティングの提案案件でRFP(提案依頼書)が出てくる企業はほんの一握りです。また友人の沢渡あまねさんもよくおっしゃられていますが、RFPを金曜の夕方とか大型連休、夏休み、正月休みの直前に届けられることが頻繁にあるが、これは業界全体の悪弊だとのこと、これもサステナブルな状態でないと言えるでしょう。
サステナビリティというととても遠い世界の話のように聞こえますが、そうではないのです。考えなければならないのは「持続可能」な「安定調達」かどうかです。
こういうシンプルな視点でもう一度自社の調達業務を捉えてみる必要があるのではないでしょうか。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。