STP、すなわちSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)。これこそはマーケティングのキモである。STPの設定次第で、ビジネスの成否が決まるといっても決して過言ではない。従って自社がビジネスを展開する、セグメントとターゲットの変化には、いつも気をつけておきたい。
こうした状況に対応すべく、着実に改革を進めているのがガストだ。ガストといえば、従来は典型的なファミリーレストランであった。そのポジショニングは次の図のようになるだろう。すなわち、家族客をターゲットとして、どちらかといえば子どもが喜ぶ食事をメインで提供する。
これに対して、ガストは増えている女性一人客をターゲットとした、新たなポジションも視野に入れ始めている。端的に表現するなら「ファミレス」から「女子レス」へのポジション転換である。
日経産業新聞2017年1月10日の記事によれば、ガストは女性一人客をターゲットとした、デザートメニューやライトミールの充実を図っている。メニュー変更に伴い、メニューブックそのものも女性を意識したデザインテイストに変更している。
女性を狙うなら、女性の感性を重視
ガスト改革の開発チームメンバーは、5人の内4人を女性が占めている。女性を狙うなら、女性の感性を無視してはならない。これは鉄則だ。
その意味では、今開発スタッフの変革に取り組んでいるのが流通大手。イオンなどは積極的に女性の意見を売り場作りに取り入れている。四国の地場スーパーでも、店頭POPなどはパートの女性スタッフが手書きするという。なぜなら、彼女たちこそは、その売場に来ている顧客そのものだからだ。実際に仕事を終えたパートスタッフは、店で買物をして帰る。自分が欲しいものを、自分に伝わるようなPOPで表示すれば、それがターゲットにも刺さる。奈良生協でも成績の良い売り場は、女性に商品陳列を任せているところだと聞いた。
買い物に来るのは女性客なのだから、女性に商品開発から店頭までを任せるのは理にかなっている。逆に未だに、商品開発会議参加者の98%ぐらいを男性が占めるGMSもある。売り場を見れば、その差は歴然としている。
次はどうなるのか?
比較的裕福なポジピン客による消費は、今後もしばらく続くだろう。その意味では、現在の自社のターゲットに彼らを追加し、新たなターゲットとして検討してみる勝ちはあるだろう。彼らに向けた新たな商品やサービス企画を考えてみるのも良い思考訓練になる。
さらに彼らが歳を重ねていった時に、どうなるかとシミュレーションしておくと、より発想が広がるのではないか。本当にいつまでも一人でいられるのか。仮に40代後半になったときに、衣食住をはじめとする彼らのライフスタイルはどう推移しているのか。子どもを必要としない人たちが、どれぐらい増えるのか。子どもの数がさらに減った時には、どんなマーケットが生まれるのか。
想像を膨らませてシミュレーションするだけなら、コストはかからない。新しい年の初めに、自社のビジネスを因数分解して考え直してみてはいかがだろう。
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