最近は欧米企業を中心にサステナビリティやCSR調達の観点からサプライヤリストを公開する企業が増えてきているようです。
米国アップル社が主要のサプライヤリストを公開しているのは有名な話です。日本企業では自社がどのようなサプライヤと取引があるかというのを自ら進んで公開することはありません。ですから米国アップル社がサプライヤリストを公開した当初は衝撃的なニュースだったと記憶しています。
しかしそれが最近の欧米企業では当たり前になりつつあるようです。
2016年11月21日付の日経新聞の記事でこういう記事が掲載されました。
「途上国の工場リスト公開」欧米企業「労働環境は健全」
記事の要約は以下の通りです。
『米ギャップは9月にバングラデシュやカンボジアなどの900近い製造工場のリストをネットで初公開した。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(米国)によると、今年は独C&Aや英マークス・アンド・スペンサーなど少なくとも4つの大手ブランドがリストを公開した。従来であれば取引先企業の情報は自社の製品情報の漏えいリスクや、優秀な技術を持つ取引先の情報が漏えいし他社に知られることで競争力が低下するという2つのリスクから多くの製造業では取引先企業の情報を重用秘密としてきた。
特にギャップは「競争上の理由」として公開を拒んできた代表格だったが、そのギャップですらサプライヤリストの公開を行った。これは「大企業が取引先の健全な労働環境を確保する責任を負うべき」という考え方によるもの。』
この考え方は正にサステナビリティという概念そのものです。
記事によると米ナイキやスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)、独アディダスなどは既にサプライヤリストを公開しているようであり、ナイキにいたっては各工場の従業員数や女性・移民の比率も明らかにしているようです。
ナイキは1990年代後半に途上国の2次サプライヤで児童労働が発覚したもののが不買運動にまでつながりました。また米国アップル社も中国のiphoneなどの組立て工場での過酷な労働条件が問題となり、マスコミ等で取り上げられたりしています。
このようなCSR調達、サステナビリティの視点からのレピュテーション(風評)リスク以外の観点からも各国などの法規制や近年の事案などからも特に新興国におけるサプライヤの労働環境への配慮が重要視されつつあります。
2013年にはバングラデシュでH&Mなど多くの欧米アパレルの委託工場が入るビルが倒壊し、千人以上が死亡したという事件がおきました。これを機会に「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh、通称:アコード)」が発足しました。
また、米国ではいわゆるコンゴ紛争鉱物規制でアフリカの紛争地周辺で産出した特定の鉱物を製品に使っていないことの証明を上場企業に義務付けています。同じく米国のカリフォルニア州では2012年に製造・小売業者に取引先の過酷労働防止策を公表させるサプライチェーン透明法を施行。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。