第四回目は「部品集約」=「コスト削減」の誤解について述べていきます。
パターン3は「既量産×共通化」です。これは難易度が高いです。既に製品設計が終わっているので再度設計変更や代替品の試験評価などを行わないと実施できないからです。
ですから購買部門だけでなく全社を巻き込んだ活動になってきます。一方でコストメリットもあまり大きなコスト削減は通常考えられません。ですから現実的には殆ど進まない取組みと言えるでしょう。
パターン4「既量産×標準化」これも難易度は高いです。しかし単価は安くなる可能性が高いでしょう。ですから実際にはこの取組みを全社を巻き込み如何に進めていくかが推進のためのポイントとなります。しかし今まで買っていたものを標準化することで、もし新規生産のための投資による償却が終わっていなければ償却負担は残るため、切替えの時期などにも注意する必要があるでしょう。
このように4つのパターン毎に考えてもそもそも集約が難しいものもありますし、やり易くてもメリットが出難いものもあります。こういう観点からも「部品集約」=「コスト削減」とは必ずしも言えないのです。
ただ4つのパターンではやはり「標準化」の2つのパターンであれば、部品集約がサプライヤ集約にもつながり一社のある特定の品目の生産量の増加につながりやすいです。または特定のサプライヤの売上増加につながり収益向上につながることも考えられます。このように「標準化」の方が一般的にサプライヤのコスト削減や収益向上につながりやすくメリットを享受しやすいと言えるでしょう。
しかし現実的には標準化の推進であっても「既量産」の部品集約の活動はハードルが高く殆ど行われていません。そのため部品集約のメリットを出すためには如何に「新規」の時に新しい部品をつくらないで標準品や既存品を採用するか、がポイントになります。またそれを仕組みとして持つことが望まれます。
ある企業では製品開発部門に製品別のプロダクトマネジャーを設置するとともに部品毎の責任者を設置しました。この部品毎の開発責任者は部品集約や共通化の役割を担っており開発が新規でその部品を開発する際には必ず部品毎の開発責任者の承認を得ること、という仕組みを作りました。それによって従来であれば製品毎に勝手に開発が行われていた
ものを管理し、部品種類の大幅な削減を実現しています。いわゆる「部品主査」制度です。
一方で難しいのは部品集約などの推進はトータルコストの視点を持たなければならないという点になります。例えばある特定の部品は関係する部品の設計によってスペースが制限されてしまいどうしても製品毎に限られたスペース内で開発するために種類が増えてしまったというようなケースです。この場合には部品集約をするためには特定の部品はもしくは関係する部品のどちらかを変更しなければならなくなります。特定の部品Aを標準化するために関係するBという部品の種類を増やさなければならない、ということです。このようなケースではA部品とB部品のトータルコストでどちらの部品を標準化すればメリットが出るか考えなければなりません。
このような新規設計の際の部品種類を集約する取組みやトータルコストで検討を進める等の取組みを進めることで始めて「部品集約」=「コスト削減」につながるのです。
前回の繰り返しになりますが調達購買改革のキーワードの元、何から何まで一つの考え方で推進しようとすると無理が生じるのでしょう。
次回は、誤解その5「競争化」=「コスト削減」の誤解について述べていきます。
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調達購買改革を巡る誤解
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調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。