マーケティングの因数分解パート1

画像: Karolina Grabowska STAFFAGE

2016.09.05

営業・マーケティング

マーケティングの因数分解パート1

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

素晴らしいアイデアを思いついた! これを活かした新製品を開発、あるいは新サービスを展開すれば絶対うまくいく……、と思って始めたビジネスが、うまくいかないことは多々ある。あるいは最初は調子良かったのに、いつの間にかお客様から相手にされなくなることも。そんなときには、どこが悪かったのかを考えてみよう。考えるガイドになるのが、マーケティングの因数分解だ。

ところが、B2Cの場合は、価値観は個人によって異なる。同じフレンチで同じメニューを頼み、同じようなサービスを受けて、同じ代金を支払ったとしても、「めっちゃ良かったやん」と「二度とないな」に別れたりする。これがB2Cビジネスの難しさだ。とはいえ、これも考え方である。仮にフレンチを経営するなら、自分の店はどんな客をターゲットにするのかを、明確に打ち出せばよい。そこを曖昧にして、というかスケベ根性を出して、あらゆるお客様に好かれる店などと考えると、どんなお客様からも好かれることのない店(=特徴のない店)になってしまう。

マーケティング変数その1:3C

従ってどんなビジネスであれ、絶対に欠かせないのがCustomer、つまり提供する商品なりサービスなりに、価値を認めて対価を払ってくれる相手を考えること。あなたのビジネスでは、誰が顧客なのかが、はっきりと定義されているだろうか。ここでいったん、この記事のリードに戻ってほしい。リードには次のように書いてあったはずだ。

「素晴らしいアイデアを思いついた! これを活かした新製品を開発、あるいは新サービスを展開すれば絶対うまくいく……」

もちろん、これでうまくいくケースがあることを否定はしない。けれども、これだけでは、非常に危なっかしいとも思う。なぜなら、ここにはCustomerの視点がないからだ。この話をするときに筆者が例に使うのは、日本のS社と韓国のS社のエピソードである。

日本のS社「良いものを作れば売れる」
韓国のS社「売れるものが良いものだ」

日本のS社が言う「良い」とは、S社からみた価値判断である。そこに顧客の視点はない。だから、同じテレビを扱っていながら2つのS社には大きな差が付き、日本のS社は海外メーカーの傘下に入った。この事例から学ぼう。

残る2つのCは、Competitor(=競合)と、Customer(=自社)である。ここではCustomerを頂点として、底辺に競合と自社を置いた三角形をイメージすると良い。顧客はどちらを高く評価してくれるのか。顧客の判断基準は、あくまでも価値と対価のバランスに尽きる。

仮に、いま展開しているビジネスがうまく回っているなら、狙っている顧客が、自社が提供している商品なりサービスに対して、対価以上の価値を認めてくれていることになる。であるなら再確認すべきは、顧客にとっての価値と対価のバランスであり、競合の動きだろう。この関係を不変だと思い込んでしまうと、成功のジレンマに陥ってしまう。顧客の状況は、常に移り変わる。そもそも顧客を取り巻く環境要件が、簡単に変わるのだ。まず注目すべき変数としてPESTや5Fが重要だ。

逆に、いま展開しているビジネスが不振ならば、顧客と提供価値と対価のバランスを見直すこと、加えて競合との比較を行うことが喫緊の作業となる。もしかすると、そもそも顧客を想定していたのかとか、顧客にとっての価値をきちんと定義していたかとか、対価設定を原価の積み上げだけで考えていたのではないか、などの反省要素が出てくるかもしれない。

まずは、価値と対価について振り返ってみること、その際には顧客の視点を徹底すること。これがマーケティング因数分解その1となる(たぶん、続く)。

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