新商品を発売したり、新しいサービスを立ち上げたりする。そんな時は、誰もが成功する気満々のはず。まさか失敗するなどとはつゆ足りとも考えていないだろう。けれども、世の中そんなに甘くない。新商品がヒットする確率は、実は0.3%とも言われる。だから失敗して当然、とはいえ、そこから立ち直れるかどうかは、マーケティングの力を使えるかどうかにある。
最初にどう考えたのか
マーケティングのセオリーに従うなら、新商品やサービスを企画する際には、マクロ分析、ミクロ分析から始めることになる。具体的にはPEST分析や3C分析である。その上でVC分析、5F分析と進めていく。ただし分析といっても、ロジカル思考に秀でたコンサルタントじゃなければできない、などとたいそうに考える必要はない。
分析、すなわち情報を集めて、分類することだ。仮にインバウンド関連のサービスを立ち上げようとしているのなら、PEST分析で集めて来るべき情報は次のようになる。
外国人観光客の来日を促進するような政府の動きはあるのか(Political)
為替や海外の経済などの状況はどうなっているのか(Economical)
Airbnbのようなサービスが普及しているのか(Technological)
などの情報である。
また、立ち上げようとしているサービスが、外国人観光客を対象としているなら
彼らが来日時に困っていることは何か(Customer)
困っていることを解消するサービスは何があるか(Competitor)
を調べればよい。
あるベンチャーのケース
外国人観光客をターゲットとしたビジネスを考えた起業家がいた。彼はまず、アンケート調査を行った。訪日観光客が、何に一番困っているのか。同じ調査を総務省などでも行っているが、何より不便を訴えているのが、フリーWi-Fi環境のないことだ。
同じアジアでも韓国や台湾などでは、観光地ならたいていフリーWi-Fiが整備されている。ところが日本では通信キャリアが提供するサービスは、契約者以外使えず、行政などが提供するサービスもメールを送ってログインしないと使えない(そのメールを送れないから困っているのだが)といった状態で不便極まりない。
そして二番目に困っているのが、道案内である。外国語の表示が充実しているとはいえず、道を尋ねてもうまく答えてもらえない。ここにチャンスがあると、彼は考えた。
フリーWi-Fiと道案内あるいは通訳を同時に提供できるサービスがあれば、きっと成功する。ここまでには問題はない。だが、その先を詰めきらずに突っ走ってしまった。ベンチャーであり固定費をミニマムに抑えていたから、コスト競争力はある。特別なルートで人的リソースを確保していたから、通訳などのパフォーマンスも高い。つまり4PのうちProductとPriceは競合優位にある。
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