知られざる、金沢工業大学の巧みなマーケティング戦略

2016.06.27

営業・マーケティング

知られざる、金沢工業大学の巧みなマーケティング戦略

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

金沢工業大学といっても、ご存じない方が多いかもしれない。名前の通り、金沢市にある工業大学である。地方の、私立の、単科大学を、わざわざ取り上げる理由は、その巧みなマーケティング戦略にある。少子化により大学淘汰が加速する時代である。大学もマーケティング戦略の巧緻により、勝ち残りが決まる。

大学が提供する価値は何か

コトラー先生によれば、ビジネスとは、価値と対価の交換である。では、大学が提供する価値とはなんだろうか。対価を支払うのは、学生の保護者である。保護者並びに学生が求める価値は「将来の可能性を高めること」だろう。

もちろん、就職だけが可能性ではない。大学卒業生なら、研究者の道もある。けれども、KITは、教育の質を高めて、社会に求められる人材を育てることに絞り込んだ。そのために教員の意識改革にも取り組んだ。

多くの私立中堅大学では、教員の多くが国立大学出身者で占められ、彼らは偏差値50程度の学生に対して、自分たちが受けてきた教育を押し付けようとする。当然、そこには齟齬が起こる。こうしたギャップを埋めるべく、教員の意識改革を徹底し、さらには企業の研究者を多く教員として招く。

すべては、明確に定められた価値を提供するための取り組み、すなわちマーケティングの原則に則った活動である。KITの成功事例は、マーケティングの生きたお手本であり、他の大学にも活用できるはずだ。

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