分業のメリットと弊害

2016.05.06

経営・マネジメント

分業のメリットと弊害

野町 直弘
調達購買コンサルタント

調達購買業務の機能や役割はだんだんと広がっています。一方で十数年前と比べると調達購買業務は細分化され分業が進んでいます。この先日本企業が分業と特化に関してどのように進めていくのがよいでしょうか。

一方で分業についてはデメリットも上げられ、例えば仕事の「やりがい」を感じられないという点は大きな問題です。また、あまりに細分化された仕事ばかりやっていると仕事の全体像がみえにくくなるという問題もあります。同時にいわゆる二遊間のポテンヒットのように誰も拾わずにそれが問題として残ってしまう、これも多くの企業で見られる問題の一つでしょう。

このようなメリットデメリットが上げられますが、調達購買分野ではどのような分業が理想的な姿でしょうか。これは各企業毎にそのビジネスモデルや調達購買に求められる優先順位などにより異なるでしょう。

ある企業ではサプライチェーンの強化や競争優位をもたらすためのサプライチェーン作りが求められるのであれば、単純化するとQCDのうちDを最重要視し、次はCということになります。このような企業ではサプライチェーン全体での視点が必要になりますので、比較的広範囲の業務範囲を分業せずに受け持つ必要があるでしょう。
ある企業では技術ソースに力を入れます。ここではQCD以外のTを中心とした仕事になります。そうすると仕様選定やサプライヤの技術知識などのより上流に範囲を広げた業務範囲に対して責任を持ちます。
また、ある企業ではサプライヤの育成やマネジメントに力を入れており、サプライヤマネジメントにフォーカスした役割となり、P(ポジションとかパートナーシップ)に重点をおいた仕事になり、サプライヤの育成・支援などまで範囲を広げた業務に対して責任を持つことになるでしょう。

このように単純に分業化、細分化が進むだけでなく、いくつかのパターンに層別されたメリハリのある分業と機能強化が望まれているのではないでしょうか。

いずれの方向に向うにしても共通して上げられる検討すべき重要な項目が2つあります。

一点目は企業の調達購買部門としてミッション、ビジョンを明確にし、その方向性を明確にすることです。以前メルマガでも取り上げましたが、調達先進企業は優れたミッション、ビジョンを持っています。またそれにより価値観を共有し部門の運営を行っているのです。
このようなミッション、ビジョンの明確化とそれを調達購買部門のトップが自らの言葉で共有するような活動が重要なポイントの1つです。

もう一点は日本型分業の確立。具体的には多能工の活用です。「多能工」とはご存知のようにトヨタ手法であり「仕事のムラ」を少なくするため、特定の業務を特定の人だけが担当するのではなく、特定の業務を様々な担当者が行える状況を作っておくというやり方として知られます。多能工を育成することで誰が担当しても仕事が進みますし、多様な視点が入りやすくなるでしょう。
「多能工」を活用すれば、ある業務で改善が進んだら、それを横に展開することもスムーズになります。そうすることで成功体験やノウハウが全社に広がるでしょう。これをトヨタでは「横展」(ヨコテン)と呼んでいます。
また「多能工」の活用のためには、育成の仕組みも必要です。具体的にはジョブローテーションやスキル育成、人事評価制度の仕組みなどの整備です。

これらの日本型分業の仕組みは従来の日本企業で根付いていたやり方であり、極度に専門職化と労働市場が流動化している欧米企業ではその必要もありませんし、実現することもできません。
ここ数年でまた新しい調達購買の分業体制整備が国内企業でも進んでいくことは間違いないでしょうが、新しい日本型分業の仕組みを構築していくことが欧米企業との競争に勝つことにもつながるでしょう。

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野町 直弘 / 調達購買コンサルタント

パーチェシングマネジャーによる市況、景況感のレポートを発行いたしました。当レポートは、各業界・企業の調達購買マネジャー(PM)による市況動向や予測、景気動向などについて討議し、それを発信していくものです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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