上編に続き、組織は働き手に、よき人財として何を求めるか、そして何を育まなければならないかを考える。今回は、「賢慮・美徳性」、「自律した強い個のマインド」の観点から述べる
仕事を真に極めていくことは、必然的に「孤独」という状態を引き込んでいきます。
また「孤独」でなければ本当の深い仕事はできません。
(注意:「孤独」であって、「孤立」ではありません)
真のプロフェッショナル、真の経営者を見つめれば、それは実に孤独なものです。
ゲーテは、
「何か意味あることは、孤独のなかでしか創られないことを私は痛感した」と言い、
また、ソローは、
「ものを考える人間、働いている人間はどこにいようとも孤独である」と言いました。
この孤独に耐え、孤独を基盤とし(哲学者・池田晶子の言う“「零地点の孤独」を知る”)、
孤独を楽しみにさえする。
そして、外にはそんな孤独をみせずに、周囲と調和をはかり、周囲を動かして、仕事を成していく
――――これが「個として強い」人財です。
・業務命令の意図を理解し、それをソツなくこなすことはできる。だが、仕事をつくりだすことができない。
・事業や組織への不満や批評を口にすることは多い。だが、それを変えようとする意気はない
・3人寄っても文殊の知恵が出ない。誰もが周囲の出方をうかがって、自分の意見を言わない。無難で平板な論議しかできない。
・経営からの情報・意思を単に現場に下ろすだけの“伝言型”中間管理職が多い。自らの意見を上に返すこともなく、また、自らそしゃく・増幅して下に伝えるわけでもない。
・「その仕事において、そう行動する理由はなぜだ?なぜだ?なぜだ?」・・・と問うていけば、結局、「組織がそう求めたから」という答えしか出てこない。
・現状の事業・仕事のやり方・あり方は明らかに組織都合のものである。決して顧客目線にはなっていない。しかし、それを変えることは面倒だし、失職のおそれすらあるので容認してしまう。
・(本人の意識は薄いが)組織外の場に出ると、やたら「●●会社の●●(役職)でござい」というオーラで立ち振る舞う。また、他の人間をみる場合に、何よりも会社名や役職で判断し、その尺度から離れられない
・・・このように働き手が「個として弱い」がゆえに起こってくる症状はさまざまあります。
私は、企業や地方自治体の従業員・職員に対し、自律マインド醸成のための研修を行なっていますが、
本当に多くが「個として強くなっていない(=個として弱いままの)」現状を感じます。
私は研修の中で、
「で、あなた自身はどう考えますか?」、
「組織や経営者の考え方の受け売りではなく、この事業に関するあなたの意見・判断は何ですか?その根拠はなんですか?」、
「あなた自身が、顧客と世間の前に出て全説明ができますか?」、
「あなたは何者ですか?名刺なしに語ることができますか?」、
「明日から一個のプロフェッショナルとして、自営で生きていくことができますか?」、
などの目線から問いを発し、各自の「個としてひ弱な」就労意識にカツを入れます。
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【5景】これからの時代の人財要件3
2008.01.21
2008.01.17
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。