「ひらめき」と「直感」はどう違うのか? この疑問に対して、「海馬」の研究で知られる池谷裕二氏 (東京大学大学院薬学系研究科准教授)がわかりやすい解説を してくれています。 (Think! WINTER 2008 No.24)
「ひらめき」(Inspiration)によって得た答えは、
「なぜそれが正解か」
を自分で説明することができます。
例えば、次のような数列、
2、4、6、□、10
の「□」の部分にどんな数字が入るかは、
パッとわかります。
「8」ですね。
そしてなぜ「8」が正解なのかについて、
「偶数が小さい順に並んでいるから」
といった説明が可能です。
しかし、「直感」(Intuition)は、
「なぜそれが正しいのか」
を言葉でうまく説明できません。
将棋で言えば、
プロ棋士は論理的思考力を活用して何十手も先まで読み、
次の手を瞬時に「ひらめく」ことができます。しかも、
それが最適手であることを論理的に説明できます。
しかし、局面が複雑になって選択肢がたくさんある場合、
さすがのプロでも先を読むことが難しくなることがある。
そんな時でも、なんだかわからないけれど
「この手を打てばいい」
と瞬時にわかるのだそうです。
これが「直感」です。
池谷氏によれば、「ひらめき」と「直感」は、
使っている脳の部位が違います。
すなわち、「ひらめき」は、
「大脳皮質」や「海馬」
といった場所の働き。
「直感」は大脳皮質の前頭葉のすぐ内側にある
「ストリアツム」(線条体)
の働きなのです。
「ストリアツム」はあまり馴染みがない名称ですが、
自転車の乗り方、箸の持ち方などの
「体の運動を制御する場所」
です。
自転車の乗り方を一度覚えると、
まず忘れてしまうことがありませんよね。
「ストリアツム」は、
このような、無意識にしまいこまれてしまう
「潜在記憶」
を司るところと理解すればいいようです。
「直感」とは、ストリアツムによって、
潜在記憶の中で高速に計算が行われた結果出てくる
「答え」
だから、言葉での説明がうまくできないのです。
一方で、ひらめきを生む「海馬」は、
自分で意識的に思い出すことのできる
「顕在記憶」
を司っています。
ですから、ひらめいた答えの説明が可能なのです。
さて、ここからは私の勝手解釈ですが、
「ひらめき」「直感」は、要するに、
「見える領域」(ひらめき)と「見えない領域」(直感)
をそれぞれ活用できる力と言えそうです。
そして、とりわけ
「見えない領域」
を活用できるようになるためには、
長年にわたる修練を積む必要がある。
つまり、その道の超一流と呼ばれるような域まで達しないと、
優れた直感力は発揮できないと考えられます。
優れた直感力を持つプロと言えば、
将棋の羽生喜治氏や、メジャーリーガーのイチロー
あたりを真っ先に思い出しますね。
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2008.01.21
2008.01.30
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。