2009年に家電分野に参入した生活用品大手のアイリスオーヤマ。シャープやパナソニックを辞めた技術者を積極的に採用し、大手家電メーカーの後を追いかけ始めた同社だが、昨年後半から、家電づくりに対する姿勢の変化が起き始めている。そのキーワードは「原点回帰」と「脱ジェネリック」。参入からわずか6年ほどで原点回帰という言葉を持ち出すアイリスオーヤマの家電戦略とは?
目指すは「なるほどポイント」のある家電
ところがアイリスオーヤマは、それからまもなく家電づくりの舵を違う方向に切り始めたのだ。商品開発のコンセプトは「なるほど家電」。同社のウェブサイトには、「機能はシンプル、価格リーズナブル、品質はグッド。そして、人々がより気持ちよく快適に過ごすための『なるほど』をプラス」とある。
2016年1月初旬の時点で、8製品が「なるほど家電」として紹介されているが、その中には「ノンフライ熱風オーブン」もある。後継(最新)機種の「リクック熱風オーブン」ではなく、初代モデルがなるほど家電として紹介されているところに、アイリスオーヤマの視点の確かさが見えるように思う。
同社は価格の安さに焦点が当てられた「ジェネリック家電」メーカーという見方をされることを回避するためにも、機能を上乗せした家電の商品開発に向かい、それが先の「リクック熱風オーブン」のような方向性の定まらない家電をも生んでしまったようだ。今回話を聞いた広報担当者によれば「超吸引毛取ヘッドのように、生活の中でアイデアを見直し、不満を解消する家電を作っていくという姿勢に戻るというのが社内の方向性です。つまり原点回帰ということですね」と。
同社では毎週月曜日に仙台市の本社で丸一日かけて「新商品開発会議」が行なわれており、1日で扱う議題は60~70にも及ぶ。3分程度で終了するものから最大で30分かけるものまであるが、社長が必ず言うのが「その商品になるほどポイントがあるかどうか?」ということ。使う人の心に刺さる“なるほどポイント”がある企画にはGOサインが出される。それから開発にかける期間はわずか半年とスピーディだ。
2016年1月11日には玄関で花粉を取り除き、室内への侵入を防ぐことに着目して開発された「花粉空気清浄機」を発売。玄関に置いて使うという新しい提案をしており、人感センサー付きで帰宅時に服から落ちる花粉、人が動いて床から舞い上がる花粉を吸引する。設置面積が小さく、背が高いスリムなデザイン。使い方もわかりやすく訴求力がありそうだ。
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2015.07.10
2015.07.24
株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー
新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立し、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。