ニック・ボックウィンクルに人生を学ぶ ~ワルツとジルバ

2015.11.17

組織・人材

ニック・ボックウィンクルに人生を学ぶ ~ワルツとジルバ

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

往年の名レスラー、ニック・ボックウィンクル氏が亡くなりました。現役時代熱狂的に好きでしたが、いわゆるダーティ・チャンプとして有名で、汚い王座防衛でノラクラするレスリングに、高校生だった私は人生を学びました。そう、正に「汚い仕事」という、大人の人生を教えてくれたのです。

・名ゼリフ
自身も有名レスラーだったという父、ウォーレン・ボックウィンクルは息子、ニックに教えたそうです。

"If my partner wants to dance Jitterbug, I will dance it. If my partner wants to dance Waltz, I will dance it."

日本でも一部プロレスファンの間では有名なこのセリフは「相手がワルツを踊れば私もワルツを踊り、ジルバを踊れば私もジルバを踊る」とウィキペディアにも書かれているくらい知られています。検索すればわんさかリンクが見つかるでしょう。私と同じように、子供のころプロレス雑誌で読んだこの言葉に感化された、現オヤジたちが、こうした記事を書いているのではないかと思われます。

ここから学んだことは「自分一人ではない」「組織とは」「プロフェッショナルとは」「キャリアとは」という教訓です。つまりシナリオがあって、結果は最初から決まっているから八百長だといわれるプロレスに、なぜ人は感動するのか?いい歳したおっさんがいまだにプロレスを好きなのはなぜか?理由はさまざまだと思いますが、私はそこに人生を見、生き方に感動するからです。

・組織とは
自分一人が目立てば良いというのはプロスポーツではあながち間違いではありません。特に個人競技であれば、自分に注目を集めることはプロの務めともいえます。しかし自分「だけ」に注目を浴びるのではなく、自分とその周囲を含めた組織競技がプロレスだと思うのです。正義の味方・ヒーローレスラーが、悪役レスラーの反則を跳ね返し、最後に勝利するというだけでなく、悪役には悪役の人生があり、その「仕事」ぶりにどんどん惹かれたのがファンになったきっかけです。

誰もがヒーローになれる訳ではありません。誰もが脚光を浴びるとは限りません。スターの陰には、それを支えたり、光を増したりする脇役、裏方、そして敵役が必要なのです。どうみても悪役が心底悪人である訳がないことくらい、小学生の私でもわかりました。ゴジラやウルトラマンが本当はいないことをもって、「映画やドラマは八百長だからつまらない」とは決して思わないのと同じです。

個人競技に見えるプロレスは、敵役の悪役レスラーも含めた複合芸術だと思います。レフリーや若手までそのプロットたり得る、正に「総合」的な作品です。これって、会社など組織と同じなのではないでしょうか。


・エンターテインメントビジネス
長きにわたって当時のAWA世界ヘビー級王者だったニック・ボックウィンクルは、決して強いとはいわれませんでした。防衛戦は常に反則やリングアウトで逃げ切り。ルールで3カウント以外は王座移動無しというのが当時のAWAです。しかしニックの仕事はこうしたダーティ・チャンプぶりの結果、地元のヒーローレスラーの人気を高め、プロレス興行全体を支えていたのです。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

フォロー フォローして増沢 隆太の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。