「KY」を生み出す社会的圧力

2008.01.11

仕事術

「KY」を生み出す社会的圧力

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

こどもは非常に幼いときから、 大人のゼスチャーを見るだけでその意味の推測ができる ということが、研究でわかっているそうです。

それでも、以前なら、人間社会にそうした負の側面が
多少あっても仕方がないと許されていたところがありました。

しかし、現代では、できるだけ社会のルールを守り、
そして、お互いに相手を傷つけあうことを極力回避するように
なっています。

この背景には、社会学的には

「人格崇拝の高度化・厳格化」

があると見ることができます。

「人格崇拝」とは、個々人が、相互に相手の人格にまるで
神の聖性が宿っているかのごとく敬意を表し、その尊厳を
傷つけないよう配慮しあうことです。

また、例えばエスカレーターでは常に左側に立ち、
急ぐ人のために右側を空けておく(関西では逆)といった
ルールを守ることによって、全体として合理的でスムーズな
社会活動が可能になっていますよね。

現代は、こうした合理的な振る舞い、スムーズに予想した通りに
ものごとを進行させようとする人々が増えています。

ITによる自動化も進みましたし、
そうしないと世の中が回らなくなってしまってますよね。

こうした世の中では、以前なら「KY」とは言われなかったで
あろう人たちでさえ、KYのレッテルを貼られてしまうことに
なります。

他人の振る舞いに対する許容度が小さくなったためです。

ですから、KYの増加は、単に個人の問題だけでなく、
現代社会の高度化・厳格化しすぎた人格崇拝や合理化にも
原因があると考えられるのです。

同時に、こうした社会では、
自分自身の感情コントロールを極度に求められるわけですから、
精神的にはつねに緊張状態を強いられます。

その結果、精神的に破綻をきたす人も増加せざるを得ないでしょう。

また、こうした精神的破綻を避けるためでしょうか、
あえて自分の個性を消し、周囲に過度に同調する

「鉄板病」(おちまさとしの命名による現代人の行動傾向)

という症状が現れてきています。

よく、最近の若い人に対して、

打たれ弱い、ストレス耐性が低い

という非難を私たちは向けますよね。

しかし、この点についても、
本人の問題だけでなく、社会が個人に対して要求する

「自己コントロール力」

のハードルが極端に高くなっているからなのだという点も
忘れてはいけないのではないでしょうか?

現代社会は、以前よりはるかに適応が難しくなってるのです。

*人格崇拝や合理化の高度化、厳格化、また合理化の議論は、

『自己コントロールの檻 感情マネジメント社会の現実』
(森真一著、講談社選書メチエ)
→アマゾンはこちらから

を参考にしました。

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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