3Dプリンターが医療を変える PEST分析から読む近未来vol.6

2015.10.26

営業・マーケティング

3Dプリンターが医療を変える PEST分析から読む近未来vol.6

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

<PEST分析のT> 3Dプリンターが産業界を大きく変えつつある。造形材料として、従来の樹脂に加えて金属粉を使えるようになり、応用の幅がぐっと広がった。既に家電メーカーの中には金型を3Dプリンターで作り、部品の量産に使用するところも出てきている。その3Dプリンターが最も期待されるのは、医療の世界だ。


カテーテルのコイルをカスタマイズする

ある大学では、脳内の血管にコブができる脳動脈瘤の治療における3Dプリンター活用の研究が進められている。
脳動脈瘤の治療法としては、コブの破裂を防ぐために、細くてやわらかなプラチナ製のコイルをコブの中に詰める方法がある。コイルはカテーテルと呼ばれる細いチューブを太ももの血管から入れて、患部まで送り込む。
この術式だと開頭手術なしで治療できるため、患者の負担が大きく軽減される。ただし一つだけ問題があった。コブに詰めるコイルの型状を調整するの難しいのだ。
コイルは既製品である。そのため患者ごとに異なるコブの形に合うよう、現状ではいくつかのコイルを組み合わせて使われている。理想のカテーテル術はいうまでもなく、患者のコブの形にぴったり合うようカスタムメイドされたコイルを入れること。そこで3Dプリンターの出番となる。
患者のコブの形に関するデータは、既にある。つまり動脈瘤が見つかる過程では、必ず脳がスキャンされているはずで、そのデータを3Dプリンターに流用することができる。コブを正確に再現したモデルを作り、それに合わせてプラチナのコインを作れば良い。これにより高価なプラチナをムダにすることもなくなる。
まだ工学部での研究段階の話だが、今後、さらに研究が進み、治験をクリアして実用化に至れば、多くの人に福音をもたらすはずだ。
ほかには人の細胞でできたバイオインクをプリントする3Dバイオプリンターもある。細胞修復、新医療技術の研究開発、医薬品の臨床実験から臓器製造などへの応用など、3Dプリンターは医療の可能性を大きく広げる強力なツールとなるはずだ。

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