私たちは、他人が何を考えているのか、あるいは 何を感じているのかをあれこれ複雑な推論をすることなく、 ほぼ瞬時に理解することができます。 これって、よく考えれば不思議なことですね。
なぜこんなことができるのでしょうか。
この不思議を解く鍵は、
「ミラーニューロン」
と呼ばれる脳の神経回路にあります。
他人が、何かものを食べています。
それをあなたが見ている時、あなたはただ見ているだけなのに、
食べている人と同じ箇所の脳の神経回路が活性化しています。
つまり、相手の脳内の動きが、
まるで鏡のようにあなたの脳内にも反映されている。
これは、端的に言えば、他人の体験を観察することで、
あなたの脳内では「疑似体験」をしているということです。
だから、まるで自分ごとのように
相手の気持ちが理解できるわけですね。
先日の米大統領予備選において、
ヒラリー・クリントン氏が涙を見せた時、
おそらくミラーニューロンの働きによって、
彼女の苦渋の表情を見ていた支持者の脳内でも、
ヒラリー氏と同様の感情が湧き起ったはずです。
(ただし、その感情を支持者がポジティブに解釈するか、
あるいはネガティブに解釈されるかは別の問題ですが)
ミラーニューロンは、過去の実験から、
サルや人などの霊長類に存在することがわかっています。
(他の動物たちにもあるかどうかは不明)
いわゆる霊長類のほとんどは、
群れを作って共同生活する社会的な動物です。
この社会という集団の中で適応するためには、
相手の感情をすばやく理解し、適切な対応ができることが
求められます。
このためにミラーニューロンが発達したのだと
考えられます。
ミラーニューロンは、他人の感情を理解する力、
つまり「共感力」だけでなく、また、相手の行動を観察し、
模倣することによって何らかのスキルを身につける
「学習力」とも関係があるようです。
ミラーニューロンは、
発見されてからまだ10年そこそこしか経っていません。
人と人とのコミュニケーションに大きな役割を
果たしていると考えられるミラーニューロンについての
新たな発見がこれからも続々と出てくるでしょうね。
(参考文献)
*他人を映す脳の鏡
(日経サイエンス別冊、脳から見た心の世界 Part3)
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2008.01.11
2008.01.30
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。