特に調達購買部門として市況・景況・為替などの動向を把握し、分析し、予測し、情報提供や意思決定を行っていくことが役割として高まっているというお話です。
先日トヨタが鉄鋼大手と2015年度上期(4~9月)の鋼板価格を14年度下期から1トン当たり6000円(約6%)引き下げることで合意した、と新聞各紙が報道をしました。
これは最近の鉄鋼の主原料である鉄鉱石や石炭が大幅に値下がりしているのを反映したものです。また、原油価格下落に伴い、化学製品についても値下げが実施されているのが最近の傾向です。
実際に9月10日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2015年8月の国内企業物価は前年比▲3.6%となっており、主に原油価格の下落や中国の景気低迷などによる石油・石炭製品、化学製品、非鉄金属などの輸入物価の下落によるようです。
一方で同じ輸入物価でも小麦などの食料品原料は値上げの傾向にあります。また消費者向け食料品も値上げ傾向にあります。また、労働力不足により、運輸コストや建設コスト、システム開発などの人件費等の労働コストは依然値上げ傾向にあると言われています。食品材料や人件費の高騰により外食産業はダブルで値上げの影響を受け価格値上げで転嫁せざるを得ないような状況です。
このように品目によって市況の動きが全く違っている、のが現在。
先日もある日に化学原料を購入しているバイヤーの方から、今期は値下げでかなり大きな収益貢献ができた、という話を聞き、その数日後には建設会社のバイヤーから依然として職人と一部建設資材が供給不足で、いかに集めてくるかがポイントだと聞き、業種や購入品などによって市況動向が全く逆というおかしな状況が起きていることがわかります。
今まではどちらかというと、値上げの時期はあらゆるものが値上がりし、値下げの時期にはあらゆるものが値下げ、という画一的な動向でした。ある意味分かりやすい状況だったと言えます。それが大きく変わりつつあるのです。
これは市況だけの話ではありません。例えば為替なども2013年以降円安が進行していましたが最近は円高に振れており、現状は円高基調へ転換されたか今まで通りの円安基調に戻るのか、人によって見方が異なります。景況感に同様です。今までは全世界的に好景気、不況の波が訪れていましたが、現状は中国の景気低迷ははっきりしつつあるものの、国内景気や米国景気は一進一退であり、ASEANの景気なども個々の国により様々な状況です。これはグローバル化している日本企業にとっても大きく
生産活動や企業収益に影響を与えるようになってきています。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2016.04.06
2016.05.06
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。