バイヤーはサプライヤ選定という重要な意思決定について「説明責任」や「意思決定に対する責任」この2つの欠かせない責務を持たされているというお話です。そしてその答えは自分で考えるものなのです。
調達・購買部門で働く人達の重要な意思決定業務と言えば間違いなく「サプライヤ選定」と「価格決定」の業務でしょう。所謂「契約業務」であり「ソーシング業務」とも言えます、企業によっては「調達業務」と呼ぶ会社もあるようです。
それではこの意思決定をバイヤーはどのように行っているのでしょうか。
教科書的に言えば多面的かつ客観的な「サプライヤ評価」を行いその結果を基に「リスク」と「機会」を判断し、最適なサプライヤ選定を行う、、的なことになるでしょう。
しかし現実世界においては、このような教科書的な答えが全く当てはまらないことも少なくありません。
例えば要求元や開発部門が仕様書や図面を出した瞬間に「ここしかできない」サプライヤに限定されてしまう、なんてこともあるでしょう。また候補サプライヤ4社の評価の結果、どこも甲乙付け難い状況になってしまい、どこを選定するか判断に迷うことも多くあるシチュエーションです。場合によっては私はここを選びたいが上司は違うサプライヤを選定したい、なんて場面も考えられます。また何らかの戦略から必ずしも評価が高いサプライヤを選択しないことも起こり得るでしょう。
いずれにしても、重要な意思決定業務であっても単に評価の点数や○×だけではなく恣意的な意思決定が行われることは否定できません。
先日「中国調達とものづくりの現場から」で岩城さんが面白いことを書かれていました。
「第450号 優秀なバイヤーは、優れた小説家である(3/15日号)」からの抜粋です。「我々バイヤーは、ベストサプライヤーをチョイスしていると決裁者が確信を持てる素敵なストーリーを書かなくてはならない。たとえサプライヤー選定のプロセスが、どんなに理不尽なものであっても。」と。
全くその通り。バイヤーはどのサプライヤを選定するかということよりも(ことも大切だが)それ以上にそのサプライヤを選定することについての理由や論理性を決裁者や関連者に説明しなければならない、ということなのです。
これは開発部門が勝手に使いやすいサプライヤを事実上選定してしまい、調達購買部門が否が応でもこれに追随しなければならない時も同じでしょう。選定理由は「開発部門が決めてしまったから」では勿論通用しません。ですから、「バイヤーは優れたストーリーを書かなければならない」のです。
私が講師をしている研修でも似たようなことを話しています。研修では後半にケーススタディをやっているのですが、ケーススタディの主たるものはサプライヤ選定のケーススタディです。そうするとたまに出席者の方からこのような質問をされます。
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2016.05.06
2020.02.12
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。