ユーザー数250万人、導入企業数2万6000社。2007年9月遂にIBM「Lotus Notes」を抜いて国内グループウェアのシェアナンバーワンの座を勝ち取ったサイボウズ。創業時にはベンチャーキャピタルから「勝負にすらならない」とまともに相手をしてもらうことさえできなかったベンチャーは、わずか10年でIBM、マイクロソフトなどのビッグネームを打ち負かすまでに成長した。同社の奇跡的ともいえるサクセスストーリーの真相を青野社長に伺った。
■価格に戦略あり
特徴的なPromotionを展開したサイボウズにはもう一つ、その成功の決め手となったポイントがある。Price、つまり価格戦略だ。
「一番狙っていたのが50ユーザーで19万8000円のラインなんです。これがプライシングの核ですね。もちろん大手のパッケージソフトとはケタが違います」
しかし、これが実に巧妙な価格設定となっていた。なぜなら大企業の一部門(人数は多くても50人以下に収まる)が単独決済で買えるソフトの上限がたいてい20万円までだったからだ。これ以上高いソフトを導入するためには、全社を仕切っている情報システム部門に伺いを立てなければならない。そうなると部長決裁では済まず事業部長決裁まで行く。部門の担当者が気に入ったとしても、上を説得することが飛躍的に難しくなるのだ。
「これも松下での経験知なんです。だから価格だけは最初から20万以内に絶対に抑えようと決めていました」
綿密に考えられたSTPに基づき用意周到に組み立てられた製品とその価格。そこに時代の追い風を受けたサイボウズは97年10月の発売後わずか二ヶ月で単月度黒字を叩きだす。
「創業当初はたとえ3人とはいえまともな給料は誰も取っていません。とはいえ、こんなにも早く黒字になるなんてねえ。舟を出してみたら、強力なフォローが吹いてて自分たちがびっくりしていました」
顧客は狙い通りに大企業の中の一部門である。ちょうどパソコンの一人一台体制が整い、またインターネットの常時接続が当たり前となりつつあった時代背景もサイボウズに味方した。さらにうれしい誤算も起こった。OCNエコノミーの普及に伴い中小企業でもIT化の進んだところ、すなわちITリテラシーの高いところがサイボウズに関心を示し始めたのだ。
「僕が知っていたのは松下電工だけだから、中小企業さんがシステムについてどう考えているのかなんてまったくわからなかった。でも結果的には我々が狙っていた大企業内の一部門とIT化の進んだ中小企業は同じ構造だったというわけです」
時代背景による追い風、よく考え抜かれたマーケティング戦略。これらがサイボウズの躍進を強力にプッシュした要因であることは間違いない。しかし、それだけでIBMLotus NotesやマイクロソフトのExchangeに勝てるだろうか。
サイボウズが日本でナンバーワンとなった背景には、実はもう一つ決定的な要因があったのだ。
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