東京五輪エンブレムの問題の陰で、もう一つの大きな問題である新国立競技場の新しい整備計画が発表されました。この計画の一つの柱が「性能発注型の設計施工一括方式」です。これは民間の施工会社や専門工事会社の先進的な技術を設計に取り入れてコスト削減や工期を短縮しようという、いわゆる「まとめ買い」の手法です。果たして上手くいくのでしょうか。
しかし最近ではCM(コンストラクションマネジメント)という考え方で第三者的な設計会社を活用し、設計・監理会社と施工会社を分離してコストの妥当性を担保しようという動きも見られます。また発注側のプロジェクトマネジメントを育成することで設計施工分離発注を機能させるケースもでてきています。
いずれにしても民間の場合、建設に強い人員が不足していることもあり、今でも多くの案件は設計施工一括発注にならざるを得ない状況です。
このように民間と公共の調達方式が全く違うというのがこの建設分野でしょう。
公共方式と民間方式、まとめ買いとばらし買い、このどちらの方法が良いかは一概には言えません。案件毎に変わってくるでしょう。例えば難易度が高く先進的な施工技術が求められるような案件はまとめ買い、そうでなく汎用的な建設工事に関してはばらし買いでコストの透明性を求めていく、このような案件毎に最適な発注方式を採用することが求められるでしょう。
いずれにしても、公共調達、民間調達もこのように最適な調達方式を互いの良さを参考にしながら検討、採用していく、それによりQCDの最適化を求めていくことが重要なのです。
このようなまとめ買い、ばらし買いのメリットの議論は建設だけの話ではありません。昨今は様々なサービスやモノが複合化してきています。そういう環境下でどの単位でモノを調達するか、という視点は調達購買の最適化に欠かせない議論になっているのです。
今回の新国立競技場の建設に関しては費用や工期の問題から当初計画が白紙に戻されるという事態になりました。新計画ではコストと工期の問題をクリアすることが求められています。その一つの手法がまとめ買い方式ですが、工期短縮のためには迅速な意思決定が求められます。これは何も建設工事だけでなくIT導入やコンサルティングなどの全てのプロジェクトにあてはまることですが、工期の短縮や予算の管理などに一番欠か
せないのは優秀なプロジェクトマネジャーの存在です。それも発注側のプロジェクトマネジャーの役割は最も大きい。このような大きなプロジェクトにおいては何らかの変更管理や問題管理、予算管理などが必要になり、それには迅速な意思決定が欠かせないからです。そのためにはどうしても発注側の意思決定がスムーズにできるための仕組みとそれを運用するプロジェクトマネジャーが必要となります。
今回の新計画が上手く推進され誰もが素晴らしいと思える将来に残せる競技場が予定通り建設できる2020年を迎えられることを期待してます。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。