人材育成でプロフェッショナルかゼネラリストかという議論がよくありますが、大切なのは業務経験をいかにスキルのレバレッジに効かせていくか、というお話です。
また特に調達購買職は限られたリソースの中でやりくりを迫られます。経営資源や時間は有限です。その有限な資源や環境下で最適解を見出していく、このスキルも社会人として非常に重要なスキルと言えます。常に多忙でプレッシャーのかかる状況下で様々なことを検討し、考え、意思決定を行い、それを実行する。そのためにはもちろん社内外の調整や説得力も必要になります。
このように調達購買職は改めて考えても色々なスキルを身に付けるきっかけになるのです。
一方で、調達購買職の方にややもすれば言える共通するネガティブな点もいくつか上げられます。例えば「上から目線になる(最近は少なくなりましたが)」、「アンテナが低い」(情報は待っていても誰かが持ってきてくれる)、「受け身になる」(仕事は待っていても降ってくるもの)、等々です。まとめて言うと自ら考え生み出していくということに苦手な人材になってくる傾向があります。
このように調達購買職が自分にとってどのようなスキルを伸ばしてくれているのか、逆にどのような点が不足しているのか、ということは調達購買部門内にずっといるとわかりません。外に出る(違う仕事を経験する)ことが改めてそれを理解するきっかけになります。
振り返ると私自身そうでした。また、外に出ることで調達購買職の仕事の面白さも分かってくるようになりました。
調達購買職で身につく多くのファンダメンタルスキルの育成は、それを意識するかしないかでスキルアップのスピードも変わってきます。もちろんスキル育成の機会と捉えることで短期間で意思決定力や調整力、説得力が身につくのです。ですから一度外に出て、また戻って来たときにこのようなことに気がつくことでより一層のスキルアップが図れます。
こういう点から一度は外に出たほうがいい、というのが私の考えなのです。
外に出る上で日本企業の海外駐在の経験はスキル育成につながるということを多くの方から伺います。特に大企業の場合は高度に分業が進んでいますので、調達購買部門にずっといると仕事に関係のない知識や経験を積む機会が少なくなります。それに対し、海外に行くと仕事の守備範囲が広くなり、また場合によっては係長が課長、課長が部長や役員などの一段階上の仕事をせざるを得ません。
例えば経理、財務、法務、人事関連の仕事を兼務したり、場合によっては事業戦略、製品企画にも絡み事業計画等も作らざるを得なくなるのです。こういう幅広い業務経験を積むことが一層のスキル育成の糧になることは間違いありません。また外から調達購買職を見ることで、その特性や良さを再認識することにもつながります。
調達購買部門人材の育成やキャリア形成で悩まれている部門長やご自身のキャリアプランに活かしていただければ幸いです。
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2010.03.20
2015.12.13
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。