先日新聞報道で西日本の電力会社が共同調達推進で将来的には年間1000億円の費用削減を目指すという記事がでていましたが、共同調達で本当にコスト削減ができるのでしょうか、というお話です。
上記のうち、1)や2)はサプライヤのコスト削減は非常に限定的になります。特に1)のパターンは共同調達をすることで100の生産、販売数量が1増加する程度なので、サプライヤにとっては殆どコストメリットはありません。
3)や4)の場合は先に上げたようなサプライヤのコスト削減につながります。ここでのポイントは共同調達を推進するときに「同じものを買う」ということが条件ということ。
②サプライヤ間の競争が厳しくなるので、サプライヤがマージンをはき出す
これはどういうことでしょう。多くの汎用品、標準品の場合、共同調達を進めてもサプライヤのコストメリットは限定的です。しかし、共同調達を進めることで今まで競争環境が厳しくなかったものが厳しくなる、今まではA社と取引があったサプライヤ、例えばb社だけが競争相手だったものが、購買企業B社と取引があるc社、d社も新たな競争相手になるということですから、どうしてもコスト的に厳しくなります。
そうするとサプライヤa社は受注を取るためにどうしても従来のマージンを削らざるを得ない。
つまりこれはそれまでサプライヤが儲けていたマージンをはき出させるだけにすぎません。間接材の集中購買活動などでコスト削減が果たせる状況の多くはサプライヤのコストは下がらずにマージンを削っている②の状況と言えます。
③サプライヤの営業戦略上値下げに応じる
多くの場合、生産量、販売量が増えるとサプライヤから重要な顧客として捉えられます。例えば外資系企業などでは一般的な概念ですが、グローバルアカウントとして奉られ、本社に営業担当が設けられたりするのです。こういう企業の場合、サプライヤの生産コストなどのコスト削減が実現されていなくてもより有利なディスカウント率が適用されたりします。これが③のケースです。しかし、③のケースでは資材費の高騰などの値上げ局面では影響度が高いために真先に値上げの要請をされる立場になります。
このように共同調達のメリットと言ってもその要因からサプライヤのコストが確かに下がるケースとそうでないケースまで、いくつかのパターンが想定されるのです。また、当然のことながらサプライヤのコスト削減につながらない共同調達はそのメリットは長続きしませんし、将来的に何らかの反動が起こり得ることも想定されます。
つまり①の3)、4)のようなメリットの出し方が求められるのです。
その上で、今回の新聞記事のケースを当てはめて考えるとどうなるでしょう。私は今回報道にあった企業のコンサルをやっていませんし、購買状況もよく知りません。
ですからあくまでも仮説になりますことをご理解ください。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。