「ロジカルシンキングは誰でも身につけられる」と研修会社の営業担当や講師はいいますが、私は疑問です。 本稿では、ロジカルシンキングが苦手な方に有効な、ロジカルシンキング的思考法について考えていきます。
ロジカルシンキングは本当に誰でも身につけられるものですか?
小さいながらも会社経営に携わり、また組織の人材育成に関わる仕事に携わっている私としては、以前から気になることがありました。
それは、研修事業者の営業担当、そして講師が、「ロジカルシンキングは誰でも身につけられる」ということです。
この記事を読んでいるみなさん、特に組織で人材育成に関わる仕事をしているみなさんの実感として、この言葉は真実でしょうか。
率直に言って、私はかなり懐疑的なのですが、一番の問題だと思うのは、「(この研修を受ければ)誰でも身につけられる」という思考が、「これでダメならあなたが悪い」という結論、諦め、思考停止を生んでしまわないか、ということです。
ロジカルシンキングはコミュニケーションツール
仲の良い友だちならばともかく、ともにビジネスで成果をめざすメンバーとしては、論理的に思考できるか否かは非常に重要なポイントになります。
もちろん、理念を含めた価値観の共有、業務遂行のための自立や互助に関する能力が重要なのは言うまでもありませんが、本稿ではロジカルシンキングに絞って話を進めます。
ロジカルシンキングは、個人としての思考ツールだけでなく、他者とのコミュニケーションツールでもあります。論理的な会話が成立するということは、早くて正確な意思疎通がしやすいということですから、ロジカルシンキングが組織で働く際に非常に有用であることに異論を持つ人は少ないでしょう。
ロジカルシンキングがそこまで重視されないシーンとしては、特別なスキルや権限を持ったマネージャーもしくはメンバーがいる、あうんの呼吸でコミュニケーションが取れる、文脈が限定的で考える余地が少ない、といったものでしょうか。
コミュニケーションは「どう伝えるのか」の前に「何を伝えるのか」が重要
頭の中でなされる思考そのものは見えません。
思考は話し言葉や文書や図解等で表現されることで、他者は認識できます。
そこで、プレゼンテーションやら文書作成やらといったスキルに目がいきがちですが、何を言っているのか分からない人の話をよくよく聞くと、その人自身も伝えたいことが不明確であるケースがあります。
対話の中で主張が明確になっていくケースが多くありますが、発信している時点では不明確なのです。
「何を言っているのか分かりづらい」「情報量は多いが中身がない」と感じる場合、『伝え方』ではなく、『主張そのもの』が曖昧であったり、論理が飛躍していることが原因である場合もあるのです。
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2009.10.27
2010.03.20
株式会社エデュテイメントプラネット 代表取締役
社内教育担当者・教育事業者・学校法人を対象に、研修(授業)企画・教材開発サービスを行う。 特に、繰り返し実施する研修で、講師の品質に大きく左右されず、常に一定品質以上の教育効果を生むことをめざした研修の企画・開発を行っている。 開発した教材のテーマやメディアは多岐に渡り、ビジネスゲーム『ロボロボ』は韓国大手製鉄会社でも活用されている。