長期的視点が成功をもたらした資生堂の経営改革

2007.12.28

経営・マネジメント

長期的視点が成功をもたらした資生堂の経営改革

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

資生堂の業績は絶好調。 2008年3月期の営業利益は 580億円 と過去最高益を更新する見込みです。 (日経情報ストラテジー、FEBRUARY 2008)

当アンケートの当初の回収率は17%程度でしたが、
現在は22%、およそ5人に1人は回答してくれています。

これはかなり高い回収率と言えるでしょう。

しかも、アンケートの自由回答欄には、
回答者の約6割の顧客が意見等を書いてくれており、
大半がお褒めの言葉や応援の言葉だそうです。

顧客満足度調査の結果は、
毎月1回、BC1人ひとりにフィードバックしています。

自由回答欄の記述内容も原文のまま見せます。

したがって、BCは、個々のお客さんが自分の接客をどのように
評価してくれたかを知ることができます。

自分が接客した顧客全体の平均値ではなく、
顧客それぞれに対する接客を振り返り、接客を改善することが
可能になったというわけです。

前田社長によれば、販売ノルマがあった頃は、
たとえば今日の売り上げ目標が40万円だったとして、
それを達成してしまえば息が抜けてしまうことがあった。

ところが、顧客満足度調査の仕組みを導入してからは、
最後のお客さんまで気が抜けなくなった。

顧客1人ひとりに対して真剣勝負を挑まざるを得ず、
前田社長曰く、

“お客様が先生のような存在になり、BCさんも本当の意味で
 成長していくという感じがしますね”

なのだそうです。

前田社長は、販売ノルマを撤廃した際、
改革を優先するから売り上げが下がってもいいと明言しました。

なぜなら、

“売り上げよりも何よりも、5年、10年を見た時に、
 お客様からの信頼をどれだけ獲得することができるか、
 全社員のエネルギーを集中させることが大事だったんですね”

と考えていたからです。

「メガブランド戦略」にしろ、
店頭における「販売ノルマ」の撤廃にしろ、
資生堂の改革の核には、

「長期的な視点」

があったことがおわかりですよね。

目先の売り上げ・利益に一喜一憂しない。
顧客の満足、そして信頼を勝ち得ることが持続的な成長のカギ
であることを示し、それに前田社長はコミットした。

短期的な視点しか持たず、
目先の収益確保に血眼になった企業は、
やはり短期で没落する。

しかし、長期的な視点に立った経営ができる企業は、
長きにわたって栄えるものだということが、
資生堂の改革の成功から実感できますね。

資生堂はもう135年も続いている長寿企業なのです。

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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