パナソニックが今年の4月より事業部門毎に分散購買している調達機能のうち、汎用品の調達を一本化しその機能を新会社に移すという記事が発表されました。パナソニックは以前から様々な組織改革を進めています。その狙いは?
このように集中購買なのか、分散購買なのか、というように全てに白黒をはっきりつけることは難しいことも多いです。しかし何かの改革を進める時に明確な方向性を示すためシンプルな手法やキーワードもしくは、KPI(Key Performance Indicator)を持ったり設定したりすることは、とても有効なことです。
例えば「集中化」「競争化」「標準化」。これはある企業の中計でのKPIですがシンプルで分かりやすい。例えば改革を推進する上ではこのようなシンプルなKPIを持つことで改革の方向性を共有することが可能となります。しかし、これらのキーワードやKPIが独り歩きすることは避けなければなりません。これらのキーワードやKPIはあくまでも手段です。目的はこれらを徹底することではなく、「集中化」「競争化」「標準化」を徹底することで最適な調達を実現することだからです。よく見られるのはあくまでも手段であるべきこれらのキーワードやKPIが目的化してしまうことです。
「競争化」などでよく起こり得る事例を上げてみましょう。多くの企業では「競争化」の徹底という方針の元、購買部門だけでなく全ての社内部門に対して相見積りの入手等をルール化させていることが一般的です。しかしそもそも比較できないものを、無理やり比較し、最終的にはユーザー部門などの社内部門が自分達が使いやすいサプライヤを採用するのだが、そのサプライヤに対して他社の安価情報を指値して値段を引き下げていくなどの状況が起こりえます。
サプライヤにしてみれば全く理不尽な状況です。そもそも同じ仕様や前提条件ではないモノを横並びさせ無理やり価格だけ合わせようとする訳ですから当たり前のことです。その上「競争化」のルールは守っているから問題ありませんよね、となります。
これは、そもそも比較できないものを比較しようとするから問題となるのです。比較できない状況は調達購買の場面では必ずでてきます。もし比較できないのであれば、コスト分析等で価格妥当性を評価できれば最適価格は担保されます。目的は競争させることではなく「公平公正なプロセスで最適サプライヤーを最適価格で選定すること。」なのです。
繰り返しになりますが、それでも「競争化」「相見積の義務付け」等のシンプルなキーワードやKPIは有効。重要なのは改革のステップやフェーズ毎に応じた購買改革手法やキーワード、KPIを検討、設定していくことなのです。これらのキーワード、KPIを上手く活用することで改革のスピードを上げ、改革の方向性を調整していくことが可能となるのです。
今回のパナソニックの新聞記事を読んで改めて感じたことを述べてみました。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。