昨今の調達購買に関する興味深い動向について考察を述べます。
内容はソニーが部品調達を抜本的に見直し調達先約1000社のうち、世界の有力250社を選別し戦略パートナーとして密接な関係を築き製品開発期間の短縮や商品の競争力につなげるというものです。
ソニーの調達改革は非常に有名な話ですが、2008年から部品調達を調達本部に集約し、集中購買を推進する一方でサプライヤの集約を図り2500社から1000社にまで削減したという実績があります。
注目すべきなのは今回の戦略パートナー選定については以前のサプライヤ集約
とはその狙いに違いがあることです。記事ではその目的を「部品大手とより密接
な関係を築き製品開発期間を約2割短縮、商品の競争力を高める。」と記しており、従来のサプライヤ集約=ボリュームメリットの享受=コスト削減、という画一的な活動とは一線を画した活動と感じられます。
サプライヤとの関係性を深め、それによりサプライチェーン全体として競争力を強化するという取組みは、これも以前メルマガ(ブログ)でも触れましたがコマツの協力会組織であるコマツみどり会を軸にしたサプライヤマネジメントが事例として上げられます。正に昨今を代表する調達購買の動向事例と言えるでしょう。
最近クライアントからよく耳にする話として値上げと供給力強化が上げられます。
この先少なくとも2020年の東京オリンピックまでは石油製品や工事費などの人件費・資材費は高騰を続けるでしょう。また値上げとセットになるのは供給力不足です。
リーマンショック以降D”Delivery”に対する意識が低くなってきましたが、一方で供給力不足に悩む企業も出ていることは事実です。こういう時期だからこそ、「良いサプライヤを囲い込む」関係性づくりが必要になってきているのです。
3本目は日経BP社のTech-Onに掲載された「電子立国は、なぜ凋落したか」という元・日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの西村吉雄氏が書かれた記事です。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140124/329764/
この中の連載第7回の「Appleにも鴻海にもなれなかった日本メーカー」はとても興味深く読ませていただききました。
内容は企業の水平分業と垂直統合について書かれたもので、特に電子産業や半導体産業では設計と製造の分業が進展しEMSが大発展をした。その代表が鴻海精密工業であり、設計側の工場を持たない所謂ファブレスの代表がアップルです。
この水平分業が進展したことには道理があって進展しており、これは世界規模で
製造業の再定義が行われていることに他ならない。(「工場を持っていないメーカーと工場を持ってハードウエア製造に従事するサービス事業者の組合せ」)
しかし、一方で日本企業はそのどちら(工場を持たないメーカー、もしくは工場を持ち製造に従事するサービス事業者)にもなれなかった、というものです。
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2009.02.10
2015.01.26
調達購買コンサルタント
調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。