日本の常識、世界の常識

2013.12.10

経営・マネジメント

日本の常識、世界の常識

野町 直弘
調達購買コンサルタント

キャッシュ重視の世界の常識と支払条件が所与の条件である日本の常識の違いについて書きます。

先日購買ネットワーク会の分科会に参加した時に興味深い話がありました。所謂「支払条件」のことです。「支払条件」とは「金融条件」とも言いますが、通常モノやサービスが納品、もしくは検収されてから何日以内(支払サイト)にどのような形態で支払を行うか、という条件です。

通常多くの日本企業の購買担当者は意識すらしていないでしょう。何故なら財務・経理部門が「こういう基準でやってください」というのをそのままサプライヤ
に適用させているからです。「支払条件」の支払の形態については伝統的には支払手形を使った支払が一般的でした。しかし、手形取引については「発行費用の削減」や「印紙税の削減」「事務負担の軽減」を目的に大企業を中心に減少傾向にあります。
2007年版の「中小企業白書」を読むと中小企業でも支払手形を減少させる予定である企業が調査対象企業の1/3を超えているようで、この傾向は日本企業全体に言えるようです。手形取引はどこに向かうのでしょうか。まずは現金取引でしょう。大手企業との取引が多い弊社でも取引の99%は現金取引です。(特にお願いはしていませんが)またファクタリングというサービスもあります。これは債権を金融機関が買取り、債権者に代わり回収を行うサービスだそうです。(そうは言ってもバイヤー企業側から依頼されて契約することが多いですが。)サプライヤ側は現金化するためには一定の利息相当分を負担することで現金化することが可能なサービスです。一方で電子債権というサービスも最近立ち上がったサービスです。これは従来の手形取引を電子化したもので電子債権記録機関が電子的な記録を行う取引だそうです。私も専門家ではありませんが、ネットワーク会では最近の傾向としてファクタリング、電子債権取引が増えてきているという話がでてきました。

しかし、これらの支払条件ですが、いずれにしても従来の手形取引に代わるものとしての話であり、多くの企業で支払いサイトなどの変更は自由にはできないというのが、一般的な日本企業の「常識」だと考えます。
手元に2007年度の中小企業白書の写しがありますがここには面白いアンケート結果が出ています。「複数の企業に対して同じ製品等を販売する際に、回収サイトの違いによって異なる価格で販売した経験」がある中小企業が29.2%存在しているのです。中小企業にとって支払いサイトが重要な要素であることが分かります。
また実際にサイトの違いによって異なる価格で販売したことがある企業数を大きく上回る66.6%の企業が「製品等を販売する際に回収サイトの変更に伴って価格を変更することが妥当」と考えている、そうです。つまり良い支払条件、サイトに対しては価格条件を変更(つまり安くする)ことはあり得る、ということなのです。それにも関わらず多くの日本企業の「常識」は支払条件は所与の条件なのです。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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