新規事業の多くは失敗する。その失敗の原因を経営者のパターンごとに分析し、成功の為の処方箋を書く。
むろん、人による素養の違いがあることは否定出来ない。任せる人を間違えた場合には悲劇である。夢々学歴や既存事業の実績などで新規事業責任者を決めてはいけないのである。
Ⅲ.経営者のパターン別新規事業の注意点
さて、前回までで、新規事業の失敗理由の多くが任せられる人の問題である点を提起した。起業家に比べ圧倒的に有利な条件のもとで進められる新規事業であるにもかかわらず、うまくいかないのは新規事業責任者の熱意の欠如と甘えが最も大きな理由であるといって良いだろう。
もう一つ考えられるのは、経営者側の問題である。まず、経営者のバックボーンには3種類あると考えていい。自らが創業社長であり、ビジネスの立ち上げ時の厳しさを社内で最もよく知っている人物である場合が1つ目、自らは後継経営者であり先代から引き継がれる内容のキャッチアップを行なってきた場合が2つ目、3つ目はサラリーマン社長の場合である。ここにもう2つのファクターを加えるとするならば、上場非上場の区分と企業規模による区分があるが、これに関しては今回は深くは言及しない。 三者三様の立場の違いは、新規事業の立ち上げの際に最も影響のあるファクターであると言えるだろう。各々の立場による新規事業立ち上げの失敗事例を考えてみたい。
①創業社長の企業における新規事業の立ち上げの場合
この場合、創業社長自らが陣頭指揮を取るのが最も好ましいだろう。ソフトバンクの孫社長やファーストリテイリングの柳井社長がその好例といえる。(柳井社長は厳密には創業社長ではないが、現在のユニクロの基盤を作ったと言う意味では創業社長と考えることにする。)創業者が既存事業に成功している場合、明確に創業者が社内で最も優秀なビジネスマンであり、その人物が新規事業の陣頭指揮を取るのが言うまでもなく成功確率を最も高くする手法である。その場合であったとしても、必ずしも成功するとは限らないが創業者自らのチャレンジであるならば可能性が高いことは言うまでもない。問題は、創業社長が既存事業に多くの時間を割かざるをえない場合、社内の別の人物に新規事業を任せるケースである。あるいは新規事業の領域について創業社長があまり詳しくない場合などにも任せるケースは考えられる。
このような場合、創業社長が自らの成功体験に引きずられるあまり、垂直立ち上げや1年以内の黒字化などを要求する場合がある。自らが創業した際には、ヒト・モノ・カネ全てが足りない中でのスタートアップであったことから、少なくともその全てが一定水準で満たされている新規事業がうまくいかないはずがないと言うのがその根底となる理屈である。 しかし、残念ながら素直に二匹目のどじょうが釣れてくれることは極めて稀だ。本人の力量や執念もあるだろうが、同時に時流と運、そして周辺環境というものも重要な要素であったはずである。任せた人物が思うような結果を出せず歯噛みをするシーンも多いことだろう。
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2013.10.20
2013.12.16
株式会社リアルコネクト 代表取締役
【自己紹介】 BtoB営業組織改革・新規事業開発を専門とするコンサルタント。新規事業企画担当者・営業マネージャー・B2Bマーケッター・営業マン向けのセミナー/研修/ワークショップの講師・ファシリテーターを中心に営業組織改革、新規事業開発支援等のコンサルティングを行っている。 【保有資格】 中小企業診断士・経営管理修士(MBA)・日本酒利酒師