仕事を「能力×思い→表現」で分解してとらえる

画像: hiro

2013.07.17

仕事術

仕事を「能力×思い→表現」で分解してとらえる

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

中学生に向けた「働くって何だろう?」の授業スライドを大人の職業人であるみなさんにも紹介します。「働くことの根っこにある意識」をきちんとつくることは年齢に関係なく大事なことです。いま一度、新鮮な気持ちで仕事を分解してみてください。


さて、ここまでの下地の理解をつくっておき、 『仕事分解シート』演習に入ります。


中学生に向けては、教材として『朝日中学生ウィークリー』の「ジョブなう」という記事を使います。「ジョブなう」の連載はすでに130回を超えていて、毎回さまざまな職業が紹介されます。この記事のよいところは、実際の人物を取材し、その人を通じて職業を見せていく点です。職業内容やその職業に就くための要件はもちろんのこと、その人の生い立ちやその職に就いた背景なども記事に織り込んであります。
生徒たちにはこの記事群のなかから各自が興味をもった職業(記事)を選びます。仕事を「能力・思い・表現」の3要素に分解し、記入したシートをもとに皆の前で発表します。この記事をお読みのみなさんはご自身の仕事を見つめて、分解作業をしてください。



……さて、いかがだったでしょうか。ご自身のいまの仕事をどう3要素に分解できたでしょうか。この思考作業をさせるプログラムがどんな意図で開発されたかを以下に書きます。


■プログラム開発の意図・背景:

学童向けキャリア教育のアプローチはさまざまに考えられます。現状そのほとんどは具体的・体験的なアプローチを採用しています。1つ1つの具体的な仕事を見せ、体験させ、それを通じて働くことに関心をもたせるというものです。職業体験、あるいは職業の疑似体験をさせるテーマパークなどは、いろいろに広がっていくことが望まれるものですが、その手のプログラムは子どもに強烈な刺激を与える半面、フィーバー(熱)も冷めやすいものです。

そこで私がとるのは、抽象的・観念的なアプローチです。本プログラムが試みるのは、 「働くことの根っこにある本質を押さえる力を育むこと」です。「仕事=能力×思い→表現」というひな型にそって、千や万もある職業を考えさせるのもその意図のもとだからです。
また新聞記事を教材にして、職業を技術的要件で理解するだけでなく、その職業に就いている人間の気持ちになって、「その人はその仕事を通して、どう世の中に役立っていこうとしているのか」を想像させる訓練をします。その意図は、「すべての働く人には“思い”があるという価値認識の力を養うこと」にあります。働くことを深く理解するには、そうした多面・多義的な咀嚼(そしゃく)が不可欠だからです。

私がキャリア開発研修の現場で感じることは多々あるのですが、ここでは次の2点に触れながら、さらに昨今の「働くことの意識」の問題について書き進めたいと思います。

1点目として、雇用側・被雇用側の双方で、職業が「技術的能力と金銭的報酬の交換である」という考えがますます支配的になっていることです。そのために仕事現場において、雇用側は働き手の技術・知識による成果をもっぱら評価し(つまり企業は全人的にヒトを求めるのではなく、即戦力としての手や頭を欲する)、他方、働き手側は報酬の多寡をもっぱら考える状況が強まっています。就職(転職)においても、求職者はますます、自らの技術・知識をいかに企業の欲するものにマッチングさせていくかという競争になっています。いずれにしても、そこでは働く「思い」(=仕事観、仕事の意義、理念、信条、夢・志、使命観)といったものが脇に放置されています。

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【中学生向け「働くって何だろう?」の授業をあなたに】

村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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