中学生に向けた「働くって何だろう?」の授業スライドを大人の職業人であるみなさんにも紹介します。「働くことの根っこにある意識」をきちんとつくることは年齢に関係なく大事なことです。いま一度、新鮮な気持ちで仕事を分解してみてください。
■ 授業名:
「働くって何だろう!?」を考える特別授業
~仕事を“能力×思い→表現”で分解してみる
■ スライド講義(抜粋):
まず、基本概念となる「仕事=能力×思い→表現」の説明から入ります。
実際の仕事の例をあげて、「能力×思い→表現」をイメージしやすくします。
仕事の理解でさらに大事なことは、表現したもの(=商品・サービス)が人に買ってもらわなければならないことを知ることです。人に役立ち、必要とされ、支持され、購買されてはじめて報酬(ここでは特に金銭的報酬を指しますが)が生み出されることを頭のなかに入れなければなりません。
子どもはよく親の手伝いをすると小遣いがもらえることを体験しています。このとき大人が留意すべきは、子どもに対し、小遣い(=金銭的報酬)は、何か我慢して労働したときの対価であるという認識に偏らせてはいけないということです。「自分は我慢して働いたのだからお金をもらって当然」と考えるのはあくまで一面であり、利己の視点です。「自分の表現したものが人の益になり、世の中に貢献した。そのとき人や世の中が、お礼の気持ちとして代金を払ってくれる。それがつまり売上になり、給料になる」という、利他からの視点でとらえることを伝えねばなりません。
このことは大人の職業人たちもじゅうぶんに理解すべき点です。私もいろいろな研修現場で、またサラリーマン時代の職場で多くの愚痴に接してきました。「こんなにつまらない仕事に耐えているのに(こんな安い給料か)」とか、「給料が余計にもらえるわけでもなし、そんなストレスが溜まる仕事はしたくないね」とか。もちろん不当に安い賃金で働かされることは否定すべきですが、上のような愚痴をこぼす人は、利己だけの感情で言っている場合が多いものです。自分が行った仕事内容の対外的な価値や貢献を棚に上げておいてお金だけを主張する人が増えてしまうことは、組織にとっても、社会にとってもよい状況ではありません。衰退を招くだけです。それに第一、本人が心の底から動機を湧かせて、溌剌と働けないのが不幸です。
ちなみに、松下幸之助は『実践経営哲学』のなかで、 「本質的には利益というものは、企業の使命達成に対する報酬としてこれをみなくてはならない」と言っています。企業は社会のために使命を果たす。そしてその分だけのお金がごほうびとして返ってくる、それが利益だというのです。この考え方は働く個人にもまったく当てはまると思います。というか、そういう解釈で働いたほうが朗らかに健全に仕事人生を送れると思います。
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【中学生向け「働くって何だろう?」の授業をあなたに】
2013.07.17
2012.08.01
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。