経営哲学と投資哲学 【2】

2007.11.27

経営・マネジメント

経営哲学と投資哲学 【2】

猪熊 篤史

経営に哲学が必要であることと同様に投資にも哲学が必要である。投資における基本的な思考について考えてみたい。

 投資には哲学がいる。安く買って、高く売れば良いわけだから、投資は簡単なようだが、どこが安値で、どこが高値かなど誰にも分からない。買えば下がる、売れば上がるのが投資の基本だと考えた方が良いかも知れない。そんな基本を理解した上で投資をする必要があるだろう。徹底した調査や分析は重要だが、インサイダー情報を利用しても儲けることが出来ないと言われるほどである。確固とした哲学がなければ投資で成功することは出来ない。多くの個人投資家にとっては、なくなっても良い余裕資金の範囲で投資を行うべきである。老後の蓄えなど大切な資金を運用するのであれば分散投資などによるリスク分散が欠かせない。

 宝くじに当選する人がいるのと同様に運良く投資で大金を手にする人はいる。しかし、それは特殊な例である。宝くじや競馬の万馬券に人生をかけるような投機は避けるべきである。平均的には、利益と損失を合算して市場利回り程度の収益が得られれば良いと言える。投資で儲けたという話は誇張されて伝わりがちである。あまり期待しない方が賢明である。

 宝くじに当選するような確率的な幸運を別にすると、哲学なしに投資に成功することはない。「イングランド銀行(英国中央銀行)を破産させた男」とまで呼ばれる投資家ジョージ・ソロス氏は1992年にイングランド銀行の通貨介入に対抗して20億ドルとも言われる利益を得ている。これは自由に価格が形成される市場をにおいて中央銀行でさえも不当に価格を操作するべきではないというソロス氏の哲学を表している。野村證券(野村商店)の基盤を築いた野村徳七氏(2代目)も日露戦争後の熱狂相場後の反動を予見して市場に売り向かった。結局この投資が成功して強固な経営基盤を築くことになった。これも経験や分析に基づく投資哲学の賜物である。

 これらは代表的な成功例である。もちろん、投資哲学に従って大失敗した投資家も多い。成功と失敗を分けるのは哲学を徹底的に追求できるかどうかである。成功するまで信念を持って行動できるかどうかが明暗を分ける。それは固執ではないが、気力、体力、情熱、あるいは、信念や勇気と関係が深い。決して投機をお勧めするものではないので、ご注意頂きたい。一般に否定的な環境で、行動できるのは思慮の浅い投機家と哲学に従う投資家だけである。

 投機はそれ自体からは付加価値を生まないが、哲学に従った投資は直接的な利益(あるいは、損失)の他に付加価値を生む。その付加価値が中長期的に個人、組織、社会に対して恩恵をもたらすようである。

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