問題となったスポーツの指導と、企業の昇進人事・管理職教育の関係について。
例えば、他人に対する忍耐や寛容の重要性を知ること。部下を指導したら、すぐに結果を出して欲しいと思ってしまいますが、出来るようになるまでにはそれぞれに異なる時間が必要ですから、上司にはそれまでじっくりと見守ろうとする態度が欠かせません。失敗もあるでしょうが、もう一度挑戦させるためには、簡単に見限るのではなく、寛容な態度が求められます。
管理職は、自分の言動や見え方をコントロールするのも大切です。上司は常に部下から観察されています。誰に対してどう振舞っているか、どの仕事にどのように取り組んでいるか、などから、部下は上司の姿勢や心理を見抜きます。モチベーションが下がっているのも、焦ったり動揺したりしているのも、容易に分かってしまいます。これが、組織の士気や部下の仕事ぶりに影響するのです。だから上司は常に部下の視線を意識し、その時々の状況に相応しい言動をとらねばなりません。いつも悠々としている、常に活き活きと情熱的である、そんなポジティブな姿をキープする必要があります。
勉強熱心であることも、指導者に求められる態度です。人を動かして結果を出す役割なのですから、人はどのように物事を認識するのか、人が動機付けられるメカニズムはどうなっているのか、人の発達や成長は何に影響されるか、といった知見は重要です。直接的に部下に教える内容ではなくても、政治・経済・社会の動き、歴史や文化に関する知識、趣味などに取り組む姿勢なども、部下とのコミュニケーションににじみ出るはずです。日ごろ、ゲームや漫画やギャンブルに興じているだけの人が、優れた管理職になるとは思えません。
他にも色々とあると思いますが、いずれにしても、昇進してから実務的なスキルを学んだだけで、あとはそれぞれのスタイルで部下を指導しているような状況は、問題になったスポーツの指導と何も変わりません。もっと丁寧に、かつ時間をかけて上のような社会人・組織人としての基礎を学ぶ機会を設け、プロの指導者をしっかり育てていく必要があるというのが、今回の一連の事件から企業が学ぶべきことではないでしょうか。
高齢者の充実したライフスタイルを提言する、「老いの工学研究所」
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NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。