ミシュラン騒動でにわかに再び巻き起こったグルメブームに便乗するわけではないが、今回は食の話題をお届けしたい。
筆者が名古屋駅に降ったのは、昼食にはまだ少々早い時間。はやる心が自然と歩を早め、10分強で到着したのは広小路通りにある「うな膳」。過日、名古屋のタウン誌の記事で絶品の「ひつまぶし」として紹介されており、先々週初体験。病み付きになり今回二度目の訪問だ。
ひつまぶしは全国的にも知られた名古屋の名物であるが、鰻の焼き方は関西風が多い中で、うな膳は創業以来50年頑なに江戸風を守っているという。背開きにした鰻を白焼きした後、強火で蒸し上げ薄口タレを付けて焼き上げる。すると、ほどよく余分な脂が落ち、身はふっくらとして、かつ風味高く仕上ががる。
さて、暫し席で待った後に運ばれてきたおひつの蓋を開ける。迫力の蒲焼きがはみ出さんばかりの雄姿を横たえている。ひつまぶしは蒲焼きの身が刻まれた状態で供される店もあるが、鰻好きにはそれはどうにも興醒めだ。
注文したのは「柔らかひつまぶし・特」。蒲焼きがおひつの中にたっぷり鰻二匹分。ご飯の中にも敷き込まれている。今日の食の流行で言えば「メガ・ひつまぶし」となるのだろうか。すさまじい迫力である。
ここでの正しい食し方はテーブルの上に示されている。せっかくなので、その教えに従い食そうと思うがいきなり気が変わる。お約束では、まず、蒲焼きをおひつの中にてしゃもじで崩して混ぜ合わせるとある。しゃもじで崩せるぐらいの柔らかさが特徴であるという。しかし、こんな立派な蒲焼きの姿をいきなりバラバラにしてしまうのはもったいない。まずはしゃもじで少し切り分け茶碗によそい、鰻丼のようにして食べる準備をする。
一箸、口に運ぶ。 ・・・旨い・・。
舌の上で転がすように軽く咀嚼すると、柔らかなその身は淡雪のように口中に広がる。
「幸せ」という文字が脳裏にぱっと広がる。
食するということは、かくもストレートに幸せを実感できるものかと改めて認識する。
・・・いや、嘘を記した。それは全て食事が終わった後から思い起こした感想だ。
一口目で「幸せ」いう文字が浮かんでから後は夢中で貪るように食べてしまった。
しかし、店お勧めの食し方はやはり道理があるようだ。そのまま鰻丼風に茶碗二膳食べると、鰻の濃厚な味わいが口中を支配する。そこで、三杯目からはお勧めにあるように鰻をおひつで刻んでまぶし、茶碗に薬味を投入する。小口ネギ、刻み海苔、わさび。
すると、鰻の味が圧し消されるのではなく、薬味の爽やかな風味と相まって、より際だつのがわかる。同様に更にもう一杯。
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2007.12.25
2007.12.27
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。