クリスマス商戦に経済効果はない。クリスマス商戦の驚きの歴史から、バブル期から昨今の経済波及範囲を明らかにする。
・クリスマスとクリスマス商戦の定着
高度成長期とともにさらに定着していったクリスマス文化とクリスマス商戦。その頂点は、1988年から放送されたJR東海のCM「クリスマス・エクスプレス」シリーズだった。山下達郎さんの名曲『クリスマス・イヴ』が流れる同CMでは、深津絵里さん、牧瀬里穂さんなどのスターを生み出した。
とくに88年の深津絵里さん篇は印象的だった。新幹線ホームに彼を迎える彼女。彼は見当たらず泣き出そうとしたとき、柱の陰からプレゼントを持つ手が見える。彼はプレゼントで顔を押さえ、なんとムーンウォーク(!)で登場する。「帰ってくるあなたが、最高のプレゼント」。家族でだんらんを楽しむクリスマスを、恋人同士で楽しむクリスマスに変えた記念碑的CMだった。
「帰ってくるあなた」だけではプレゼントにならなかったのか、高級レストランと高価なプレゼントが若者の定番となり、ひとびとは放蕩を繰り返した。そして、1992年にバブルが崩壊し、ふたたび普通のクリスマスとクリスマス商戦が戻った。バブル期は、いまでは広末涼子さん『バブルへGO!!』で懐かしまれる時代とすらなった。
そして現在、2011年の東日本大震災が影響し、多くの日本人はクリスマスを家族で過ごしたいと答えている。外食よりもイエカナ=家の中で楽しみたい。外出よりも身近で済ませたい。その動きに応じて、コンビニエンスストア各社がクリスマス関連商品を揃えているのは当サイトの連載でも書いたとおりだ。
と、こうやって、上がり下がりはあるけれど、クリスマスやクリスマス商戦自体が消滅しそうな傾向はまったくない。家族や恋人のどちらを重視するかは、時代によって変化はあるものの、そしてクリスマスに使うお金の多寡は変化するものの、クリスマスを楽しもうとする国民的総意に揺るぎはない。
ということは、クリスマスはやはり大きな経済効果をもたらすものなのだろうか。
・クリスマスやクリスマス商戦の経済効果は存在しない
クリスマスでみんなはどれくらいのお金を使うのだろうか。この手のアンケートは信憑性がイマイチなので参考程度に述べておくと、クリスマス全体の予算は2万円程度、そのうちプレゼントに使う金額が1万円程度だ。
こういったデータを使って、シンクタンクやエコノミストがクリスマス(商戦)の経済効果を試算している。数千億円程度のGDP押し上げ効果があるとかなんとか。
しかし、私がここまでクリスマスとクリスマス商戦の歴史を書いてきた理由は、それだけ日本にクリスマスが定着している「事実」を述べたかったからだ。なぜなら、経済効果は新たな事象にたいして計算される。これまで見てきたとおり、クリスマスのような定番・定着化しているイベントについて経済効果は生じない。
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2012.12.24
2012.12.25
未来調達研究所株式会社 取締役
大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。