「発ガン物質」に過剰反応してしまうわけ

2012.09.04

営業・マーケティング

「発ガン物質」に過剰反応してしまうわけ

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

今年(2012年)4月の発売以来、「特保」の認定を初めて受けたコーラ系飲料として好調な売れ行きを見せていた「キリン メッツコーラ」ですが、コーラの着色料として使われる「カラメル色素」の副産物として発生する「4-MI」(4-メチルイミダゾール)は、米・カリフォルニア州では「発ガン物質」として規制の対象となっていることが報道され、消費者の不安をかきたてていますね。

こうして、私たちは本能的に「毒」と感じられるものを避けるようになってしまったのです。

リスク研究で知られる心理学者、ポール・スロヴィックは、人々の毒に対するこのような反応を

「直感的毒性学」

と呼んでいます。

理性的に考えれば、

「毒は投与量によって決まる」

ものであり、むしろ、

「適量の毒は、病気の治療にも使えるのだ」

ということも理解・受容できるのですが、
感情的・直感的には、

「毒は少量でも回避したい」

という気持ちを抑えることができないのです。

また、私たちは基本的に

「損したくない」

という意識、すなわち「損失回避傾向」がとても強いため、たとえ極めて低い確率であっても、なるべくリスクを取らないことを好みます。

以上のような理由から、私たちは

「発ガン物質が含まれている」

と聴いただけで感情的にわさわさして過剰反応してしまうのです。

したがって、身体の健康に直接影響がある製品を作っているメーカーとしては、

消費者の反応は感情的・直感的なものであり、「理屈」があまり通用しないこと

を踏まえて適切なコミュニケーションをしなければならないということになります。(難しい課題ですが・・・)

*「キリン メッツコーラ」に含まれるカラメル色素の安全性について
(キリンビバレッジ WEB品質保証室)

(参考文献)

『リスクにあなたは騙される-「恐怖」を操る論理』
(ダン・ガードナー著、田淵健太訳、早川書房)

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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