改正雇用対策法の趣旨とも合致せず、若者の機会を奪い、潜在的失業者の権利と化している定年制度について。
また、働く側も、いつまで勤めればいいのかが分からなくなる。勤続年数に応じて高いポジションや給与が与えられ、それが定年退職制度によって一定の年齢まで守られるという状態ではなくなる。窓際にいながら定年までのカウントダウンをしている潜在的な失業者は、カウントダウンができなくなる。そこに処遇に差がつき、早期退職という道も提示されると、キャリアや人生設計について自分で考えて、選択するようになるはずだ。転職や転進が視野に入るので、社内でしか通用しないスキルや人脈に満足するようなこともなくなってくるだろう。
定年制がなくなると、企業が評価や選抜にメリハリをつけ、それらを通して人件費をより強くコントロールするようになる。結果として雇用の流動化が進み、働く人達の自立度も高まる。自然に、若者にもチャンスが増えるはずだ。厚労省から見れば、定年退職制度を禁止すれば65歳まで働けなくなる人が増えて、社会不安が増大してしまうということかもしれない。
であれば、「年齢にかかわりなく均等な機会を与える」などと方便を使わないことだ。本気で「年齢にかかわりなく均等な機会を与える」のであれば、雇用における年齢差別の撤廃を目指して定年制も当然禁止すべきだ。定年制の禁止は困るというなら、はっきりと「若者の雇用よりも、中高年の雇用を重視した政策を行っています」「企業は、セーフティネットの役割を担うべきだ」と言えばよい。
高齢者の充実したライフスタイルを提言する、「老いの工学研究所」
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2012.06.08
2012.06.22
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。